【栄養士・管理栄養士向け】16時間断食と減量(基礎編):16時間断食をするとやせるって本当?

食事パターン

本記事は、栄養疫学分野の一研究者が興味を持ったテーマについて、学術論文をベースに自身の見解も交えて分かりやすく紹介することを目的としています。正確な情報発信を心がけていますが、栄養疫学はとても奥が深く、ひとりの研究者では全容を理解することが難しい側面があります。執筆者の知識不足や誤解から生じる誤りもあるかもしれません。したがって、本記事の内容だけをもとにして結論を急いだり、すぐに食べ方を変えたりすることはお勧めしません。

減量の方法として、プチ断食やファスティングが注目されています。とくに「16時間断食」は、関連する本が発売されてから、YouTubeでもたくさんの動画があげられ、ちょっとしたブームになっているようです。

「16時間断食をすると本当にやせるの?」
「16時間断食をしたら筋肉が落ちるってほんと?」

病院で働いていたとき、テレビなどで新しいダイエットが取り上げられると、すぐ栄養相談でこのような質問を投げかけられ、何と答えたらよいか分からず困っていました。この記事では、管理栄養士で博士(保健学)である篠崎奈々が、このような疑問にどう答えるかを考えながら、16時間断食の減量効果に関する科学的根拠を調べてまとめました。結論としては、「16時間断食は減量の選択肢としてあり。ただし、何を食べてもよいと考えるのは危険」だと思われます。

内容が盛りだくさんになってしまったので、前編(基礎編)と後編(実践編)に分けてお伝えします。

1. 16時間断食ってなに?

16時間断食は、時間制限食( time-restricted eating または time-restricted feeding )とよばれる断食方法のひとつで、「食事は8時間以内に済ませ、その後の16時間は何も食べないようにする」という食事のとり方です(文献1)。たとえば、下の図のように、朝10時から夜18時までの8時間に食事を済ませ、夜18時から翌朝10時までの16時間を何も食べない時間とします。

16時間断食

この図のスケジュールはあくまで一例であり、食べてよい時間と絶食する時間は自由に決めてかまいません。しかし、一度決めたスケジュールを毎日繰り返します。原則、食事の際にエネルギー(カロリー)の計算などをする必要はなく、普段と同じ内容の食事をします。

2. 16時間断食をするとやせるといわれるのはなぜ?

なぜ16時間断食をするとやせると考えられているのでしょうか?16時間断食を含む時間制限食がわたしたちの健康に与える影響とそのメカニズムについては、十分に明らかになっていません。しかし、論文でよくとりあげられている仮説をご紹介します。

① 摂取エネルギーが減る

16時間断食のような時間制限食では、1日のなかで何も食べない時間を作ることで、1日にとるエネルギーが減るために体重が落ちると考えられています(文献2)。これまでの研究では、時間制限食を実行すると、1日の食事の回数(文献3、4)、とくに間食の回数が減ることが明らかになっています(文献4)。そのため、食べる時間を制限するだけで(エネルギー制限を指示していなくても)、時間の制限なく食事をする場合と比べて、摂取エネルギーが減ることが確認されています(文献5~7)。

クッキー

② 概日リズムが正常化する

人間の体には「概日リズム」と呼ばれる24~25時間ごとに繰り返されるリズムがあり、ホルモンの分泌や栄養素の代謝などは概日リズムに従っています。概日リズムを作り出す体内時計は、食事による影響を受けます。つまり、不規則な食事をしたり、1日のなかで長い時間にわたって食事をしたりすると、概日リズムが乱れて肥満や糖尿病などの生活習慣病を招く可能性があります。そのため、時間制限食で食事時間を制限することによって、体内時計のずれを減らし、代謝異常を改善する効果があると考えられています(文献8、9)。

時計

3. 実際、16時間断食をしたらやせるの?

16時間断食の減量効果を調べるためには

では、16時間断食をすると本当にやせるのでしょうか?その疑問に答えるためには、科学的根拠となる論文に目を通す必要があります。しかし、「ある集団が16時間断食をしたら体重が減った」という研究結果だけでは十分とはいえません。なぜなら、その人たちは16時間断食をしなくても自然に体重が落ちたかもしれないし、何か別の原因でやせたかもしれないからです(たとえば、実はエネルギー制限もしていた、など)。よって、16時間断食の効果を調べるためには、16時間断食をするグループと、比較対象となる別の食事のとり方をするグループで、体重がどれくらい減ったかを比べる必要があります。

パソコン

さらにいえば、そのような研究でもひとつの研究結果をみるだけでは十分とはいえません。なぜなら、研究に参加した人たちの特性(性別や年齢)、研究方法は研究によって異なるため、たまたまその研究でその結果が得られただけかもしれないためです。そのため、複数の研究の結果をまとめて解析することにより、多くの研究で得られた、よりもっともらしい結果を知ることができます。そのような研究をメタアナリシスといいます。

時間制限食の効果を調べたメタアナリシス

16時間断食のような時間制限食の体重減少に対する効果については、いくつかのメタアナリシスが出版されています。たとえば2020年には、1日に12~20時間の断食を行う時間制限食を4週間以上続けたときの体重減少量を調べた11の研究の結果をまとめたメタアナリシスが発表されました(文献10)。その結果、時間制限食では、好きな時間に好きなものを食べる食事と比べて、有意に体重が減ることがわかりました。

体重計

この結果をみると、時間制限食には体重減少の効果がありそうですね。しかし、このメタアナリシスには以下のような限界があります。

  • 解析に含めた研究の数が少ない
  • 解析に含めた研究のサンプルサイズが小さい
  • 食事をする時間や絶食する時間、断食の継続期間が研究によって異なる
  • ラマダンの研究が多い(=研究対象者がイスラム教徒に偏っている、16時間断食で広く行われている日中に食事をとるスケジュールとは異なる)
  • 対象者特性にばらつきがある(健康な人、筋力トレーニングをしている男性、肥満、2型糖尿病患者など)

つまり、研究方法や対象者の特性にばらつきがある研究や、必ずしも質が高くない研究をまとめているということになります。16時間断食を含む時間制限食に関する研究は、ここ10年程で増加した比較的新しい分野で、人間を対象とした研究の数が十分ではありません。よって、時間制限食の減量効果を調べるために必要な、質の高い研究の数が十分にはないのです。

上で紹介した以外の時間制限食に関するメタアナリシスにも、①比較対象となる群がない研究の結果も統合している(文献11)、②比較対象とする食事療法にばらつきがある(文献12)、③16時間断食だけではなく1日おきの断食、週に数日の断食などの様々な研究の結果を統合しているため(文献13)、16時間断食の効果はわからないといった限界があります。

よって、「16時間断食でやせるかどうか」という疑問に一般論として答えるには、人を対象とした研究がもっと必要です。

4. では、16時間断食でやせられるか聞かれたら何と答えるか

これまでの研究には限界があることはわかっていても、栄養士や管理栄養士は患者や地域住民に「16時間断食ってやせるの?」と聞かれ、何かしら答えを求められる場面も多いと思います。そのようなときにどう答えたらよいのでしょうか?

ここで減量の原則に立ち返ってみると、基本的に、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回れば体重が落ちます(文献2)。そして、「16時間断食をするとやせるといわれるのはなぜ?」でお話ししたように、16時間断食では摂取エネルギーが減ることで体重が落ちるといわれています。つまり、16時間断食をすると概日リズムの正常化などほかのメカニズムも働くのかもしれませんが、基本的には、標準的な減量のためのダイエットであるエネルギー制限とやせる仕組みは同じですね。よって、16時間断食をすることで摂取エネルギーを減らすことができれば体重も当然落ちるはずです。

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現在の食事時間から考える、16時間断食が向いている人

さて、わたしたちはそもそも毎日何時間断食をしているのでしょうか。2021年に発表された論文によると、日本人の集団において、自然と断食している時間(夕飯を終えてから朝食までの時間)は平均11時間です(文献14)。しかし、世の中にはもともと絶食時間が16時間を超えている方もいるでしょう。もともと食事をとらない時間が長い人は16時間断食をしても摂取エネルギーにあまり変化がないでしょうから体重は減らないと考えられます。

時計

逆に言うと、間食が多かったり晩酌が長かったりして1日の食事時間がかなり長くなっている人が、16時間断食して1日に摂取するエネルギーを減らすことができれば、体重は落ちる可能性が高いといえます。

メリット・デメリットから考える、16時間断食に向いている人

また、食事療法には向き不向きがあり、長く続けられなければあまり意味がありません。この向き不向きについて、16時間断食のメリット・デメリットから考えてみましょう。

減量における16時間断食の最大のメリットは、方法がシンプルでわかりやすいということです。食べる時間を変えるだけですので、面倒な食品のエネルギー計算をする必要がありません。エネルギー制限によるダイエットと比べて、時間制限食は食べるものを変えたり食品のエネルギーをチェックしたりする必要もないので、長く続けやすい減量法であるといわれています(文献2)。

計算機

一方、デメリットは、食事の時間を変えなければならないことです。一定の絶食スケジュールを保つのは、昼休憩の時間が定まっていたり、夜に家族で食事をしたり、会食が多かったりする場合には難しいかもしれません。

飲み会

特に日本人には、朝昼晩のある程度定まった時間に3食とおやつを食べる習慣が根付いているので(文献14)、そもそも食事のスケジュールや回数を変えるのが難しいと感じる方もいるでしょう。日本人の食事のタイミングについては以下の記事で詳しく説明しています。

日本食はどこが優れているのか? 世界との比較から読み解く日本食の5つの特徴
「日本食の栄養バランスはすばらしい!」「和食は世界に誇れる健康食だ!」世の中には食や栄養、健康に関する情報があふれかえっています。日本食や和食についての情報も例外ではありません。でも、そもそも日本食(和食)とは何でしょうか? 健康食とは何でしょうか?

また、断食により、頭痛などの副作用がみられることもあります(文献13)。このように考えると、16時間断食は以下のような方に向いているダイエットだといえるでしょう。

16時間断食に向いている人
  • 朝一番の食事から寝る前の最後の食事までの時間が長い人 (夕食後に晩酌をしたり、だらだら間食をしたりする習慣がある人など)
  • 摂取エネルギーの計算が面倒な人
  • 食事の内容を変えたくない人
  • 食事の時間をある程度自由に変えることができる人

よって、「16時間断食でやせられるかどうか?」の問いに答えるためには、その人の現在の食事やライフスタイル、減量に対する取り組み方を調べたうえで、現在の食生活からどれだけ変えられるか、16時間断食をどれだけ続けられるかを考える必要がありそうです。

基礎編のまとめ

さまざまな論文に目を通しましたが、私でしたら「16時間断食をするとやせるかどうか」の問いに対しては、研究結果を万人にあてはめられるほど研究が十分に行われていないし、実際にやせるかどうかはその人のもともとの食事のとり方やライフスタイル、考え方に左右されるところが大きいだろうというと答えます。ただ、少なくとも、16時間断食をして太ったという結果はありませんし(ただし、太ったという結果は研究成果としてそもそも世の中に発表されないかもしれません)、命にかかわるような重大な副作用も報告されていません。私個人の考えとしては、ダイエットはやってみなければ何が合うかどうかはわからないので、やってみたいという人がいたら、薬や既往歴等に制限がなければ、特別とめる理由はないように思います(断食すべきでない人に関しては、後半の記事で解説していますので、併せてお読みください)。

前半はここまでです。後半の実践編では「16時間断食を実際に行なうとしたらどのようなことに気をつけるべきか」をテーマに、以下のようなトピックをお話しする予定です。

  • 16時間断食では何を食べてもいいの?
  • 食べてよい時間は8時間じゃなければだめなの?
  • 食べてよい時間帯は早いほうがいいの?遅いほうがいいの?
  • 断食したら筋肉量が減ってしまうのでは?
  • 16時間断食に関する今後の研究

以上、篠崎が「【栄養士・管理栄養士向け】16時間断食と減量(基礎編):16時間断食は減量に効果的?」というテーマでお話ししました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

実践編はこちら:

【栄養士・管理栄養士向け】16時間断食と減量(実践編):16時間断食をすると筋肉が落ちる?
前回の記事では、16時間断食は減量に効果があるかどうかの科学的根拠と、減量におけるメリット・デメリットについてお話ししました。 続きとなる実践編では、「16時間断食をすると筋肉が落ちる?」など、16時間断食を行なう上での素朴な疑問に対してどのようにお答えすればよいかを考えてみました。

文献(PubMed等へのリンクあり)

1. Réda A, Wassil M, Mériem M, Alexia P, Abdelmalik H, Sabine B, et al. Food timing, circadian rhythm and chrononutrition: a systematic review of time-restricted eating’s effects on human health. Nutrients. 2020;12(12):1–15.

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