なんで正月太りするの?栄養疫学論文から考えました

栄養トピック

本記事は、栄養疫学分野の一研究者が興味を持ったテーマについて、学術論文をベースに自身の見解も交えて分かりやすく紹介することを目的としています。正確な情報発信を心がけていますが、栄養疫学はとても奥が深く、ひとりの研究者では全容を理解することが難しい側面があります。執筆者の知識不足や誤解から生じる誤りもあるかもしれません。したがって、本記事の内容だけをもとにして結論を急いだり、すぐに食べ方を変えたりすることはお勧めしません。

突然ですが、皆様は新年になってから体重を量りましたか?年末年始は、クリスマス、大晦日、お正月などイベントが盛りだくさんで、食の誘惑が多い時期でしたね。わたしは見事に体重が増えてしまいました。

今回のテーマは「正月太り」です。実は、1年の中で特に体重増加に気を付けたほうがいい時期はお正月だけではないかもしれません。この記事では、以下の点について論文をもとにまとめました。

  • 1年の中で特に体重が増えやすい時期は?
  • なぜその時期に体重が増えてしまうの?
  • 体重を増やさないためにどうすればいい?

私なりの結論は次のとおりです。

年末年始などのホリデーシーズンには、特に体重が増えやすいです。この時期に増えた体重を完全にもとに戻すのは多くの場合難しいので、羽目をはずしすぎないことが重要です。体重を増やしすぎないようにするためにも、なるべくこまめに体重を量るとよいでしょう。」

このような結論に至った科学的根拠を見ていきましょう。

1. 1年の中で体重が増えやすい時期はいつ?

体重は毎日減ったり増えたりします。そして体重の変動を年間を通して見ると、1年の中で体重が特に増える時期があるということが研究で明らかになっています

2020年に発表された系統的レビューでは、欧米諸国を中心とした13の国における、ハロウィーン、サンクスギビングデイ、クリスマス、お正月休みなどのホリデーシーズンの体重変動についてまとめています。その結果、23 の観察研究中16の研究で、ホリデーシーズンに体重が増えることがわかりました。各研究における体重増加量は0.25~2.3kgで、平均0.7kgでした(文献1)。

祝祭ディナー

同年に発表された、英国、デンマーク、ポルトガルの成人1062人(減量後、体重を維持する介入研究に参加中の人々)を対象とした研究でも、クリスマスの前後で平均して1.35%体重が増加することがわかりました(文献2)。(この論文の図5に、見事なまでに年末から1月初旬にかけて体重が増える体重変動グラフが載っています。)

このように、年末年始を含むホリデーシーズンに体重が増えるという傾向が欧米諸国を中心とした研究で明らかになっているようです。

日本人ではどうでしょうか?日本人の年間の体重変動に関する研究はほとんど見つかりませんでしたが、あるスマート体重計の利用者のなかからランダムに選んだ570人の日本人を対象とした調査によると、日本人の体重のピークがあるのは1月と5月でした(文献3)。各時期のイベントを考えてみると、1月にはお正月、5月にはゴールデンウィークがありますね。

※ちなみにこの研究におけるデータの取得時期は不明です。また、スマート体重計を使っている人の特性は偏っていると考えられます。より一般的な日本人における年間の体重変動の特徴を捉えるには、綿密に計画された大規模な研究が必要でしょう。

こうしたデータを見てみると、年末年始だけでなく、ゴールデンウィークなどの連休中も、体重増加に気を付けたほうがよいかもしれません。

2. 体重が増える原因は?

なぜ体重が増えてしまうのでしょうか?年末年始などのホリデーシーズンに見られる食行動の変化として明らかになっているものは以下のとおりです。

・レストランでの外食が増える (文献4)
・健康的でない食品(お菓子、嗜好飲料、揚げ物など)の買い物が増える
(文献5,6)
・アルコール摂取量が増える
(文献7)

また、ホリデーシーズンには食後の満足感が得にくくなったり(文献4)、食事の質が下がったりすることが明らかになっています(文献7)。

さらに、ホリデーシーズンにおける体重増加に寄与すると考えられている要因として、以下のものもあります(文献1,6)。

・食事時間が長くなる
・ポーションサイズ(1回に食べる食品の量)が大きくなる
・会食が増える
・クリスマスケーキなど行事のときに食べる食品は、エネルギー(カロリー)密度が高く栄養価が低い

体脂肪の増減は、エネルギー摂取量とエネルギー消費量のバランスで決まります。食事からとるエネルギーが、体が使うエネルギーを上回れば体重が増えます。よって、年末年始などのホリデーシーズンに体重が増えるのは、様々な食行動の変化の結果、身体が必要とする以上にエネルギーをとりすぎてしまっていることが原因だと考えられます。

3. 増えた体重は減りにくい?

最初に紹介した論文では、ホリデーシーズンには平均して0.7kg体重が増えるということでした (文献1)。この数字を見て「それぐらいの体重増加ならすぐ取り戻せるからたいしたことない」と思う方もいるかもしれません。しかし、米国人を追跡した3つの調査によると、ホリデーシーズンに増えた体重は、その時期が終わっても完全には元に戻っていませんでした(文献8–10)。つまり、ホリデーシーズンに体重が増えると、そのあとの増えたままになってしまいがちということです。

この他の研究でも、ホリデーシーズンの体重増加は1年の体重の大部分を占めていることが指摘されています(文献5,8,11)。例えば、南アフリカの男女約52万人を対象とした研究では、1年間に増えた体重のうち、男性では79%、女性では66%が11月~1月のサンクスギビングやクリスマスなどのホリデーシーズンに増えたものであることがわかりました(文献5)。

長期休暇や行事は年に数回あり、それも毎年必ず来るものですから、そのたびに体重が増えていると、体重は増える一方です。このことを意識して、長期休暇中や行事で羽目を外して体重を増やしすぎないこと、増えてもそれ以外の時期に減らす努力をすることが、体重を維持するためにはとても重要といえそうです

4. 体重を増やさないためにどうしたらいいの?

これまでの部分で、年末年始などのホリデーシーズンは体重が増えやすく、その時期の体重増加が1年間の体重を左右するということがわかりました。

でも、行事ごとの特別なお菓子や料理も楽しみたいですよね。では、休暇を楽しみつつ、なるべく体重を増やさないようにするにはどうすればよいのでしょうか。

体重を量ろう

非常にシンプルな方法ですが、体重を量ることは体重管理に有効といわれています(文献10,12,13)。 2019年に発表された論文をひとつご紹介します。研究の概要は以下の通りです。

研究の概要 (文献10)
対象者:18~65歳の米国人111人
研究デザイン:ランダム化比較試験
研究方法:対象者を毎朝体重測定する群と、何もしない群にわける。両群とも自由に食事し、生活する。
結果の測り方:①サンクスギビングデイの前(11月中旬)、②正月休み明け(1月初旬)、③ 休暇後(②の14週間後)の体重変化を比較

文献11における休暇前後の体重変化のグラフ
折れ線グラフは各群の対象者の平均体重の推移を表しています。
*何もしない群において、休暇前の体重と比べて有意に増加
† 何もしない群において、 休暇明け直後の体重と比べて有意に増加

朝食後に体重を測った群では全期間を通して体重に変化はありませんでしたが、対照群では①休暇前から②休暇明け直後にかけて体重が有意に増加していました。また、①の時点と比べると、②と③の時点で起きた体重の変化には、群間で有意な差がありました。

体重を量った群も結果として体重に変化がなかっただけで、日々の変動をみると全く体重が変わらなかったわけではありませんでした。サンクスギビングデイや年末年始などのホリデーシーズンの最中に体重が増える傾向はあったものの、それ以外の時期(サンクスギビングデイの前後など)に体重が減少したため、結果として体重が維持されたのです

よって、「体重を量ることで体重増加が完全に防げるわけではないが、体重が増えた分取り戻さないといけないということを思い出させる効果があるのではないか」と、この研究の著者らは述べています。

日々の体重測定などの継続的なセルフモニタリングは、以前の記事で紹介したMichieらの行動変容技法でも紹介されています(文献14)。また、272人の米国人を対象としたランダム化比較試験でも、体重測定に加え体重管理のポイントや食事や運動のエネルギーに関する情報を提供することで、よりクリスマスの体重増加を防ぐ効果が示されました(文献15)。

したがって、体重を日々量ってみる、というのはすぐにできる自己管理方法として取り組んでみてもよいかもしれません

ちなみにこの研究で使われた体重計はWi-Fi対応で、体重を量ると自動的にアプリに送信され、最初の4日間に量った体重が目標体重を表す基準線として示され、毎日の体重変動が体重計とアプリにグラフで表示されるというハイテクなものだったようです。対象者たちは、目標体重の基準線を超えないように指示されていました。しかし、このような体重計がなくても、例えばiPhoneの「ヘルスケア」アプリを使用して体重を記録するなど、体重変動をグラフで見てわかりやすくする工夫ができそうです。

他には何ができる?

研究が古かったり論文が少なかったりするため個々の紹介はしませんが、共役リノール酸のサプリメントの摂取、間歇的断食(一時的にエネルギー摂取量を極端に減らすこと)、食事のセルフモニタリングをする、なども有効であるとされています(文献2)。

また、体重管理のために取り組んだ方法の数が多いほど体重増加量が少なかったという報告もあります(文献16)。ただしこれは、単純にその人のやる気の程度を表しているかもしれません。

文献17の文献の中で紹介されていた、減量中の人々が休暇中に体重管理のためにやっていた取り組みをいくつか挙げておきます。(ただし、必ずしもこれらが効果があった方法というわけではありません。)

  • すでにやっている運動を続ける、運動をさらに増やす
  • 1回に食べる食品の量や種類、食べた食品やそのエネルギーを記録する
  • 体重を定期的に図る
  • ホリデーシーズンに食べる価値のあるものを選び、自分にとって特別でも重要でもないものは食べないようにする
  • パーティーやイベントがある日は、他の食事で食べる量を調整する
  • 満腹になったら食べるのをやめる
  • 特定のタイプの食品を避ける
  • 健康的な料理を食べる
  • 誘惑の多い食べ物を家の中に置かないようにする
  • お酒をやめるか減らす
  • 食べ物以外のことにフォーカスする
  • 座っている時間を減らす
  • でかけるときに健康的なおやつをもっていく
  • 体重の目標を誰かに伝え、サポートしてほしいと頼む

何か目に留まったものはありましたか? 減量や体重管理の方法は、人によって合う合わないがありますし、もともとの生活習慣によって効果も異なると思います。自分の食べ方を振り返ってみて、少しでも食べすぎを防ぐことができそうな方法があれば、やってみてもよいかもしれません。

おまけコラム:1月はみんな決意を新たに健康な食事に走る?

先ほど、年末年始を含むホリデーシーズンには、健康的でない食品(お菓子、嗜好飲料、揚げ物など)の買い物が増えることを書きました。個人的に面白かったのは、1月には、野菜や果物など、健康的な食品の購入量が増えるということです(文献5,6)。

このような購買行動の変化は、年末年始に体重が増えたり食が乱れたりしてしまった人々の、「今年こそは健康的な1年にするぞ!」という新年の決意を反映しているのかもしれません。しかし、論文には「そのような一貫性のない食行動は、体重増加の予測因子である傾向がある」と書かれていて(文献5)、クスリとしてしまいました。

まとめ

今回の記事では、「正月太り」をテーマに、1年の中で特に体重が増えやすい時期と体重増加の原因・対策についてまとめました。この記事の結論は以下のとおりです。

年末年始などのホリデーシーズンには、特に体重が増えやすいです。この時期に増えた体重を完全にもとに戻すのは多くの場合難しいので、羽目をはずしすぎないことが重要です。体重を増やしすぎないようにするためにも、なるべくこまめに体重を量るとよいでしょう。」

食に関するデータを見ていると、「なぜそのような行動をとるのか」という理由や心理を類推できるような、そしてそれに共感できるようなことが度々あります。食の研究をする面白さは、そうした「人間らしさ」のようなものが、データに如実に表れるところだと、個人的には感じています。

以上、管理栄養士・篠崎が『なんで正月太りするの?栄養疫学論文から考えました』についてお届けしました。記事をまとめて、私も自分に対する大いに戒めになりました。最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。もっと栄養疫学を知りたい方は、ぜひ下の引用文献を辿っていってその奥深さを体験してください。

参考文献

1. Zorbas C, Reeve E, Naughton S, Batis C, Whelan J, Waqa G, et al. The relationship between feasting periods and weight gain: a systematic scoping review. Curr Obes Rep. 2020;9(1):39–62.

2. Turicchi J, O’Driscoll R, Horgan G, Duarte C, Palmeira AL, Larsen SC, et al. Weekly, seasonal and holiday body weight fluctuation patterns among individuals engaged in a European multi-centre behavioural weight loss maintenance intervention. PLoS One. 2020;15(4):e0232152.

3. Mehrang S, Helander E, Chieh A, Korhonen I. Seasonal weight variation patterns in seven countries located in northern and southern hemispheres. Annu Int Conf IEEE Eng Med Biol Soc. 2016 Aug;2016:2475-2478. 

4. Bhutani S, Wells N, Finlayson G, Schoeller DA. Change in eating pattern as a contributor to energy intake and weight gain during the winter holiday period in obese adults. Int J Obes. 2020;44(7):1586–95.

5. Sturm R, Patel D, Alexander E, Paramanund J. Seasonal cycles in food purchases and changes in BMI among South Africans participating in a health promotion programme. Public Health Nutr. 2016;19(15):2838–43.

6. Pope L, Hanks AS, Just DR, Wansink B. New year’s res-illusions: food shopping in the new year competes with healthy intentions. PLoS One. 2014;9(12):e110561.

7. Jahns L, Johnson LAK, Scheett AJ, Stote KS, Raatz SK, Subar AF, et al. Measures of diet quality across calendar and winter holiday seasons among midlife women: a 1-year longitudinal study using the Automated self-Administered 24-Hour Recall. J Acad Nutr Diet. 2016;116(12):1961–9.

8. Yanovski JA, Yanovski SZ, Sovik KN, Nguyen TT, O’Neil PM, Sebring NG. A prospective study of holiday weight gain. N Engl J Med. 2000;342(12):861–7.

9. Cooper JA, Tokar T. A prospective study on vacation weight gain in adults. Physiol Behav. 2016;156:43–7.

10. Kaviani S, VanDellen M, Cooper JA. Daily self-weighing to prevent holiday-associated weight gain in adults. Obesity. 2019;27(6):908–16.

11. Stevenson JL, Krishnan S, Stoner MA, Goktas Z, Cooper JA. Effects of exercise during the holiday season on changes in body weight, body composition and blood pressure. Eur J Clin Nutr. 2013;67(9):944–9.

12. Madigan CD, Daley AJ, Lewis AL, Aveyard P, Jolly K. Is self-weighing an effective tool for weight loss: a systematic literature review and meta-analysis. Int J Behav Nutr Phys Act. 2015;12(1):104.

13. Zheng Y, Klem M, Sereika S, Danford C, Ewing L, Burke L. Self-weighing in weight management: a systematic literature review. Obesity. 2015;23(2):256–65.

14. Michie S, Ashford S, Sniehotta FF, Dombrowski SU, Bishop A, French DP. A refined taxonomy of behaviour chantechniques to help people change their physical activity and healthy eating behaviours: The CALO-RE taxonomy. Psychol Heal. 2011;26(11):1479–98.

15. Mason F, Farley A, Pallan M, Sitch A, Easter C, Daley AJ. Effectiveness of a brief behavioural intervention to prevent weight gain over the Christmas holiday period: randomised controlled trial. BMJ. 2018;363:k4867.

16. Olson KL, Coffino JA, Thomas JG, Wing RR. Strategies to manage weight during the holiday season among US adults: a descriptive study from the National Weight Control Registry. Obes Sci Pract. 2021;7(2):232–8.

この記事を書いた人
篠崎 奈々

日本食品衛生学会 リサーチ・レジデント。東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 社会予防疫学分野 客員研究員。博士(保健学)。管理栄養士。栄養疫学研究の修行中です。特に好きな食べものは豆、パン、さつまいも。趣味は登山、キャンプ、カポエイラ。

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