栄養情報、どう発信する?食と健康に関するブログを作るためのガイドライン

パソコンとコーヒーとスマホ 栄養情報の読み解き方

本記事は、栄養疫学分野の一研究者が興味を持ったテーマについて、学術論文をベースに自身の見解も交えて分かりやすく紹介することを目的としています。正確な情報発信を心がけていますが、栄養疫学はとても奥が深く、ひとりの研究者では全容を理解することが難しい側面があります。執筆者の知識不足や誤解から生じる誤りもあるかもしれません。したがって、本記事の内容だけをもとにして結論を急ぐことはお勧めしません。

食や健康に関する情報はブログなどのソーシャルメディアで日々たくさん発信されています。このブログの読者の皆様のなかにも、SNSを通じて情報発信をしている方がいるのではないでしょうか。

ブログはまとまった情報を発信するのにとても役立つツールです。しかし、間違った情報を発信してしまうと、それを実践した読者の健康を害してしまう可能性もあります。また、たとえ正しい情報を発信していたとしても、発信や運営の仕方が効率的でないと、情報が広がっていきません。食と健康に関するブログを作るときに、どのようなことに気をつければよいのでしょうか? また、読者にとって有益で魅力的なサイトにするポイントは何でしょうか?

わたしもこのブログをはじめてまだ一か月の素人で、わからないことだらけです。そこでこの記事では、食と健康に関する情報をブログで効果的に発信するために抑えておきたいポイントについて、関連する論文をもとにまとめてみました。今回ご紹介するのは管理栄養士のためのガイドラインですが、資格や職種に限らず、栄養に関する情報を発信している方には役に立つと思いますので、ぜひご一読ください。

1.管理栄養士のためのブログ運営のガイドライン – P. O. S. Tガイドラインとは

2021年に「Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics」という査読付き国際誌に「P.O.S.T ガイドライン」に関する論文が掲載されました(文献1)。このガイドラインは、管理栄養士が健康的な食生活に関するブログを作るときに、より影響力が大きく有益なサイトにするサポートをするために開発されました。ガイドラインというと守らなければいけない絶対的な規則のようにとらえる方もいるかもしれませんが、このガイドラインは予備的なものです。よって、あくまでより良いブログを書くための重要なポイントがまとまっているものととらえて参考にするのがよいと思います。

ノートパソコンを打つ人の手元

このガイドラインはどのように作られたのでしょうか?。まず、研究チームが文献を調べて、ブログを書くときの重要な要素と考えられる78項目を抽出しました。次に、各項目について、実際に栄養のブログを運営している、アメリカ、イギリス、オーストラリアの19人の管理栄養士に評価してもらいました。管理栄養士らの意見に基づき、項目の修正と統合を行うとともに、追加のポイントを加えるなどのプロセスを3回繰り返しました。最終的に、33項目を含む3つの領域からなるガイドラインが完成しました。

ちなみにガイドラインの名前であるP.O.S.Tとは、その領域の名前である①Purpose(目的), ②cOmmunity(コミュニティ), ③Structure(構造)and Tone(トーン)の略だそうです(communityだけ頭文字がOではないですが、このようにある程度無理やり略称を作るのは調査の名称などでもよく見かけます)。

今回はそのガイドラインの中から、とくに重要だと思われる5項目に絞ってご紹介します

2.ブログの目的

ポイント① 健康的な食事に関するメッセージは、読者にとって実用的なものにする。

ブログの記事のなかで健康的な食事のとり方を促すときには、読者が情報を理解して実行に移せるように、実用的なメッセージであるほうがよいということです。実用的なメッセージにする方法として、たとえば以下のようなアイデアが書かれています。

・レシピを提示する
・データや情報をわかりやすく図や写真等を用いて視覚的に表現する
・サービングサイズ(食べる量)を示す
・3食とおやつのアイデアを示す
・他の情報源や関連記事のハイパーリンクを示す

とりたい栄養素の量を実際の食品や料理に変換して、レシピなどでメッセージを伝えられるのは管理栄養士ならではですよね。これらのテクニックを使うことでより実用的で有益な記事になりそうです。

ポイント② 投稿の目的は、正確で科学的根拠に基づいた情報を提供することとする

正確な情報を発信することはとても大切です。管理栄養士が運営するブログは、確かな情報を求める人々にとって、信頼できる情報を得られるという大きなメリットがあると考えられているようです(文献2)。ブログの内容の信頼性については、2016年に同じJournal of the Academy of Nutrition and Dieteticsに発表された、栄養の専門家におけるソーシャルメディアの利用をテーマとした論文で詳しく説明されています(文献3)。

・常に正確で信頼できる情報を提供しましょう。
・科学的根拠に基づいた事実と個人的な見解を区別しましょう。
・信頼できる情報源からの情報のみをシェアしましょう。
・栄養学の研究や主張については出典を明記しましょう。
・新しい研究の結果を文脈に沿って説明しましょう。
・誤った情報を訂正し、不正確な情報に対処しましょう。

このブログのツイッター(https://twitter.com/kmnutriblog)でもこのような科学的根拠の重要性に関しては何回かツイートをしています。しかし、実際に科学的根拠をどうやって探したらいいの?出典をどうやってつけたらいいの?という疑問もあるかもしれません。科学的根拠の探し方や出典の付け方についてはまた今後、別の記事で詳しく解説したいと思います。

3.ブログによるコミュニティの形成

ポイント③ 健康的な食事のブログを書く人は、記事の内容を構成するときに、読者が誰であるかを考慮する必要がある。

ポイント④ ブログの著者は、読者が記事の目的を理解できるように、言葉遣いやメッセージを変える必要がある。

ブログをより多くの人に読んでもらったり、長期的に読んでくれる読者を獲得したりするためには、ブログの作成者が読者と関係を構築すること、つまりブログの読者に信頼してもらうことが必要ということが書かれています。読者とよい関係を構築することによって、ブロガーにとっては読者が望む情報を提供できる一方、ブログの読者にとってはアイデアを提供できるというメリットがあるようです

パソコンを前にしゃべっている人の手元

読者とよい関係を構築するためには、そのためには、読者を理解し、ときには質問を投げかけてコメント欄を使って対話することや、専門用語を解説し、読者層に合うわかりやすい言葉を使うことが重要であると書かれています。ブログの読者にインタビューを行った質的研究でも、内容がわかりやすく、内容が科学的になりすぎないことは読者が重視するポイントであることがわかっています(文献2)。科学的になりすぎない、とはいうのはどういうことかについて詳しい説明はありませんでしたが、個人的には科学的な知見を並べ立てるばかりではなく、身近な事柄に落とし込んでわかりやすく説明したり、たまには息抜きのような記事やコラムを書いたりすることもひとつの方法だと思いました。

4.ブログの構造と口調

ポイント⑤ ブログ記事における健康的な食事のメッセージは、よく構造化されている必要がある。

構造化するというのは、文章を要素ごとにわけて、分かりやすく整理することですね。たしかに構造がきちんとしているサイトは読みやすいですよね。実際、見た目が魅力的で、探している情報を見つけやすいサイトは読者にとって魅力的である、という論文があります(文献2)。ガイドラインの作成に協力した栄養士たちは、構造化のテクニックとして、具体的に以下のようなポイントをあげています。

・記事の導入部分で記事のトピックを紹介する
・記事の中間部分で有益な情報を含む複数のパラグラフで構成する
・要約とまとめをつける
・見出しをつける
・箇条書きのリストを使う

5.さらに気を付けたい重要ポイント

このガイドラインには載っていませんが、先ほどご紹介した栄養の専門家におけるソーシャルメディアの使用に関する論文では、以下の重要なポイントも紹介されていました(文献3)。

・患者や顧客の情報を書くときは同意を得るなど、プライバシーに配慮する
・医療の専門職からの助言の代わりにはならないということを免責事項に記載する
・個人的なプロフィールと職業のプロフィールはできる限り分けて記載する
・管理栄養士、栄養士などの資格を明示する
・金銭や商品を受領することを引き換えに書いた記事では、広告や宣伝であることを最初に明示する
・著作権法を守る(つまり、インターネット上の写真や記事を無断で使用しない)
・ネットいじめや脅迫行為をしない

せっかくよい情報を広げようとしているのであれば、これらのことに気を付けて、トラブルを起こさないようにしたいですね。

タブレットで検索する人の手元
◆インターネット上の健康情報の影響力
令和元年の国民健康・栄養調査によると、およそ6人に1人が食生活に影響を与える情報源としてインターネットを活用していました(文献4)。諸外国でも、EUでは携帯電話ユーザーの10人に6人が健康に関する情報をインターネットで検索していた(文献5)、オーストラリアでは10人に4人が栄養に関する主な情報源としてインターネットを使っていたとの報告があります(文献6)。ブログを含むインターネット上の食情報はいまや世界中で人々の食生活に見過ごせない影響を与えていると考えられます。

まとめ

今回は管理栄養士が健康的な食事に関するより効果的なブログを作るためのガイドラインから重要なポイントを紹介させていただきました。実際にブログを成功させている管理栄養士に対する調査を行った研究から、以下のようなポイントが大切だということがわかりました。

・実用的かつ科学的根拠に基づいた正確な情報を示す
・読者を理解し、適切な言葉を使って情報を発信する
・見出しやリストを用いて構造化する

記事を書きながら、当ブログのことを振り返ってみました。科学的根拠を示すことや内容を構造化することは達成できている一方で、読者の方々とのコミュニケーションはまだまだ不十分だと感じました。読者の皆様にとって役に立つサイトにするために、試行錯誤しながら続けていきたいと思います。

以上、『栄養情報、どう発信する?食と健康に関するブログを作るためのガイドライン』をお届けしました。最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。ご興味がある方は、ぜひ参考文献もたどって読んでみてください。

参考文献(PubMed等へのリンクあり)

1. Mete R, Kellett J, Bacon R, et al. (2021) The P.O.S.T Guidelines for nutrition blogs: a modified e-Delphi study. J. Acad. Nutr. Diet. doi: 10.1016/j.jand.2021.02.014. Online ahead of print.

2. Bissonnette-Maheux V, Provencher V, Lapointe A, et al. (2015) Exploring women’s beliefs and perceptions about healthy eating blogs: a qualitative study. J. Med. Internet Res. 17, e87.

3. Helm J & Jones RM (2016) Practice paper of the Academy of Nutrition and Dietetics: social media and the dietetics practitioner: opportunities, challenges, and best practices. J. Acad. Nutr. Diet. 116, 1825–1835.

4. Ministry of Health, labour and Welfare (2020) Summary of the results of the National Health and Nutrition Survey in the first year of Reiwa. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf (accessed June 2021).

5. Flash Eurobarometer 404 (2014) European citizen’s digital health literacy. https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/fd42f9e7-937c-41f3-bf03-4221b2db712b (accessed May 2021).

6. Miller M & Miller S (2017) Nutrition Monitoring Survey Series 2015 key findings. Department of Health, Western Australia. https://ww2.health.wa.gov.au/-/media/Files/Corporate/general-documents/Population-health/PDF/Nutrition-monitoring/Nutrition-Monitoring-Survey-2015.pdf (accessed May 2021).


この記事を書いた人
篠崎 奈々

日本食品衛生学会 リサーチ・レジデント。東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 社会予防疫学分野 客員研究員。博士(保健学)。管理栄養士。栄養疫学研究の修行中です。特に好きな食べものは豆、パン、さつまいも。趣味は登山、キャンプ、カポエイラ。

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