もうだまされない!健康・栄養情報の質を見極めるための5つのチェックポイント

フェイクニュース 栄養情報の読み解き方

最近なんだかお腹にお肉がついてきたような気がするので、Googleで「やせたい 食事」と検索してみたところ、約3160万件ヒットしました(2021/7/14)。検索結果をながめると、「モリモリ食べてやせる」「食事制限なしでダイエット」など魅力的な言葉が並んでいます。もりもり食べてやせるならそんなにうれしいことはないのですが、こういった情報はすべて信頼してよいのでしょうか

健康になるために実行した方法が私たちの体に何の変化ももたらさないものであれば、(ガックリはするものの)まだよいのですが、その方法が実は健康に悪影響を及ぼすものである場合は問題です。「病気を治したい」といった切実で深刻な悩みがあるほど、求める情報が信頼できる確かな内容であるかどうか、すなわち「情報の質」が重要になってきます。

パソコンとクエスチョン

テレビや雑誌、SNS、書籍などで、健康や栄養に関する情報があふれかえっています。どの情報が信頼できそうか、はたまたあやしそうか、見極められたら便利ですよね。実はそんなときに役立つ、健康・医療情報の質を評価するためのツールが色々とあります(文献1-3)。今回の記事では、それらの中から特に重要な5項目に絞って、氾濫する健康・栄養情報の質を見極めるための5つのチェックポイントをご紹介します

今回の記事で主に参照したのは、JAMA benchmarks(文献4)、 DISCERN(文献5)、 HONcode(文献6)、QUEST(文献1)です。前の3つのツールはインターネット上の食事関連情報の質を評価した研究で用いられています(文献7、8)。QUESTは知る限りまだ研究利用されていませんが、比較的新しい基準であるため選びました。

1.情報の作成日や更新日が書かれているか

医学や栄養学の研究は日進月歩なので、常に情報をアップデートすることが大切です。ブログやネット記事であれば記事の作成日、本であれば出版日や改訂日などが書かれているかどうかを確認してみましょう(文献1、4-6)。日付が書かれていない場合、それは最新の科学の知見に反するとても古い情報である可能性もあります

古い本と眼鏡と時計

日付が書かれている場合にも、それが古すぎないか確認してみましょう。どれくらい新しければよいという明確な基準はありませんが、QUESTというインターネット情報の医療・健康情報の質を評価するツールでは、情報が過去5年以内のものであれば質が高いと評価しているようです(文献1)。

2.情報源が明確に示されているか

だれでも様々な情報を発信ができる時代だからこそ、「その情報の根拠はなんだろう?」と常に考えることは大切です。健康法や食事のとり方の情報は、それを読んで実行した私たちの健康に短期的・長期的な影響を及ぼす可能性があります。よって、だれかの意見や個人的な体験談ではなく、科学的根拠に基づく正しい情報を参照するほうがずっと安全です。情報源として用いた論文や書籍などの参考文献が書かれていない場合、その情報は根も葉もないうわさ話か、あるいは単なる誰かの思い付きの可能性すらあります。よって、参考にした情報源が示されているかどうかを必ず確認するようにしましょう(文献1、4-6)。例えば以下のようなものです。

参考文献は、本文中に引用されていても、参考文献リストとして最後についていてもどちらでもかまいません。ただし、引用した研究や本が特定できないような書き方では不十分です。たとえば、村上先生の論文を引用するときに「村上 2008年」とだけ書かれていたとしましょう。この場合、「村上」という名字の研究者はこの世の中にたくさんいますし、村上先生は2008年には11本の論文を発表していますので、どの論文か特定することができません(実際、「Murakami 2008」だけで医学文献データベースPubMedで文献検索すると、1000本以上の論文がでてきてしまいます)。

一般に、以下が書かれていれば十分な情報といえます。

  • 論文:著者名、出版年、論文のタイトル、雑誌名、巻、ページ番号
  • 書籍:著者名、出版年、本のタイトル、出版社名、(所在地)
  • Webページ:作者名、作成年、ページタイトル、URL、アクセスした年月
    (順番はそれぞれ雑誌や機関によって異なります。ここでは例として公衆栄養学の学術誌Public Health Nutritionの投稿規定を参照しました)

3.引用されているデータは人間を対象とした研究の結果か

情報源が示されていても、内容によっては情報の質が低いと判断される場合があります。たとえば、人間での健康効果の話をするときに、動物実験の結果を根拠としていたらどうでしょうか。マウスやラットで観察された結果がさも人間にもあてはまるように書かれているのは、健康食品の広告や健康関連の書籍で度々目にします。

人間の身体は無数の細胞から成り立っていますが、細胞は人間そのものではありません。また、実験に使われるマウスやラットなどと人間は体の大きさも食事量も代謝速度も全く異なります。したがって、細胞・動物試験で得られたデータは直接人間にあてはめられるものではなく、人間における適切な食事のとり方の十分な根拠にはなりません(文献9、10)。ですので、人間の栄養について何かを主張している文章に出くわしたら、引用文献が人間から得られたデータであるかどうかを確かめるようにしましょう(文献1)。

参考文献が英語で書かれている場合も、タイトルに以下のような言葉がでてきたら注意しましょう。

Cell(細胞)、cellar(細胞の)、in-vitro(試験管内の)、mouse・mice(マウス)、rat(ラット)、guinea pig(モルモット)、rodent(げっ歯動物)、rabbit(ウサギ)、animal(動物)など。

4.内容が偏っていないか

色々な情報を集めてそれらを公平に吟味している情報はよいのですが、お金儲けをしたい、商品やサービスを勧めたい、などの、純粋な情報発信とは別の何らかの強い意図があって書かれたブログ記事や書籍は、偏った情報を発信しているかもしれません。内容が偏っていないかチェックするために、以下のような点を注意してみてみましょう。(文献1、4-6)

  • 個人的な意見と客観的な知見が入り混じっていないか
  • 特定の方法や商品についてだけ焦点をあてていないか
  • 個人的な経験談を話の根拠にしていないか
  • 利点と欠点の両方について言及しているか
  • 何かの病気や症状の予防や治療を目的としたサプリメントや食品、書籍やサービスを勧めたり宣伝したりしていないか
  • スポンサーがいる場合、明記されているか
  • 宣伝の場合は、記事を書くことで利益が発生することが書かれているか
  • 別の選択肢や別の意見、反対の結果を示す研究について書かれているか

5.口調が強すぎないか

記事の内容だけでなく、語気や論調についてもチェックしてみましょう。言及した食事のとり方や減量方法について「リスクを減らすかもしれない」や「予防する可能性がある」などの慎重な言葉を使っている場合はまだよいですが、以下のような記事や本には注意が必要かもしれません。(文献1、5)

  • 「治る」「保証する」「簡単」などの強い言葉がタイトルや内容に使われている
  • 「必ず~できる」「絶対~になる」などの強い確信を表す言葉が使われている
  • 感情的、あるいは危機感や不安感を煽るような論調である(例:「~があなたを殺す」「病気になりたくなければ~しなさい!」など

食事や栄養に関しては「最強のダイエット」「絶対やせる」などの言葉が使われることがありますよね。これらの言葉が使われている出版物の質が低いとは一概には言えません。しかし、科学には不確実性がつきものですし、ましてや栄養疫学は大変奥が深く、明快な決断が下せないことがほとんどです。もちろん商業的には必要な売り文句かもしれませんが、あまりに強く断定的な口調で書かれた情報に出くわしたらいったん立ち止まって、先ほどの「内容が偏っていないか」のポイントに照らし合わせて確認したほうがよいかもしれません

疑う人
ミニコラム 立派な肩書を過信しない

ご紹介した5つのポイント以外にも、情報発信者の氏名や資格が明記されているかどうかは質の評価の大切なポイントです(文献1、4、6)。しかし、立派な肩書がある著者だからといってその人が発信する情報を鵜のみにするのは得策ではありません。実際に書店にいくと、医師や〇〇博士などの立派な肩書があっても、参考文献がひとつもなかったり、根拠が著者自身の経験談であったりする本はたくさんあります。そのような本の中にはある特定の食品や食べ方についてかなり強力な健康効果を謳っているものもあります。しかし、専門家であっても、個人の意見はいつも科学に基づいているとは限りませんし、極端で目立つ意見が正しい情報をかき消してしまうこともあります(文献11)。信頼できる情報であるかどうかはあくまで内容で判断すべきでしょう。

まとめ

今回の記事では健康・栄養情報の質を見極めるための5つのチェックポイントをご紹介しました。

  1. 情報の作成日や更新日が書かれているか
  2. 情報源が明確に示されているか
  3. 引用されている研究が動物や細胞を使った実験の結果ではないか
  4. 内容が偏っていないか
  5. 口調が強すぎないか

これらのポイントをすべてクリアしていれば絶対安心かといえるとそうでもなく、実際これらの体裁を保ちつつ誤った情報を発信することは可能です。しかしながら、情報を鵜のみにする前に、まずはその体裁に着目して確からしさを確認してみることで、誤った情報から身を守れるかもしれません

また、今回ご紹介したポイントは、情報を受け取る側としてだけではなく、発信する側としても気を付けたいポイントですね。栄養情報をSNS等で発信している方はぜひ以下の記事も読んでみてください。

栄養情報、どう発信する?食と健康に関するブログを作るためのガイドライン
食や健康に関する情報はブログなどのソーシャルメディアで日々たくさん発信されています。このブログの読者のなかにも、SNSを通じて情報発信をしている方がいるのではないでしょうか。ブログはまとまった情報を発信するのにとても役立つツールです。しかし、間違った情報を発信してしまうと、それを実践した読者の健康を害してしまう可能性もあります。

以上、『健康・栄養情報の質を見極めるための5つのチェックポイント』というテーマでお届けしました。最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。ぜひ下の引用文献を辿って研究の奥深さを体験してください。

参考文献

1. Robillard JM, Jun JH, Lai JA, et al. (2018) The QUEST for quality online health information: validation of a short quantitative tool. BMC Med. Inform. Decis. Mak. 18, 87.

2. Breckons M, Jones R, Morris J, et al. (2008) What do evaluation instruments tell us about the quality of complementary medicine information on the internet? J. Med. Internet Res. 10, e3.

3. Bernstam E V., Shelton DM, Walji M, et al. (2005) Instruments to assess the quality of health information on the World Wide Web: what can our patients actually use? Int. J. Med. Inform. 74, 13–19.

4. Silberg WM (1997) Assessing, controlling, and assuring the quality of medical information on the Internet. JAMA 277, 1244–1245.

5. Charnock D, Shepperd S, Needham G, et al. (1999) DISCERN: An instrument for judging the quality of written consumer health information on treatment choices. J. Epidemiol. Community Health 53, 105–111.

6. Boyer C, Selby M & Appel RD (1998) The health on the net code of conduct for medical and health web sites. Stud. Health Technol. Inform. 52, 1163–1166.

7. Lambert K, Mullan J, Mansfield K, et al. (2017) Evaluation of the quality and health literacy demand of online renal diet information. J. Hum. Nutr. Diet. 30, 634–645.

8. Hirasawa R, Saito K, Yachi Y, et al. (2012) Quality of Internet information related to the Mediterranean diet. Public Health Nutr. 15, 885–893.

9. Willett WC (2000) Nutritional epidemiology issues in chronic disease at the turn of the century. Epidemiol. Rev. 22, 82–86.

10. Parekh N & Zizza C (2013) Life course epidemiology in nutrition and chronic disease research: a timely discussion. Adv. Nutr. 4, 551–553.

11. Neale EP & Tapsell LC (2019) Perspective: the evidence-based framework in nutrition and dietetics: implementation, challenges, and future directions. Adv. Nutr. 10, 1–8.

この記事を書いた人
篠崎 奈々

日本食品衛生学会 リサーチ・レジデント。東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 社会予防疫学分野 客員研究員。博士(保健学)。管理栄養士。栄養疫学研究の修行中です。特に好きな食べものは豆、パン、さつまいも。趣味は登山、キャンプ、カポエイラ。

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