朝食は将来の健康に対するとても安上がりな投資である:人間栄養学者が考える5つの科学的根拠

朝食のイメージ 食事パターン

本記事は、栄養疫学分野の一研究者が興味を持ったテーマについて、学術論文をベースに自身の見解も交えて分かりやすく紹介することを目的としています。正確な情報発信を心がけていますが、栄養疫学はとても奥が深く、ひとりの研究者では全容を理解することが難しい側面があります。執筆者の知識不足や誤解から生じる誤りもあるかもしれません。したがって、本記事の内容だけをもとにして結論を急いだり、すぐに食べ方を変えたりすることはお勧めしません。

「朝食を抜けばやせられる」
「朝食を抜くと太りやすくなる」

世の中には食や栄養、健康に関する情報があふれかえっています。朝食に関するアドバイスもそのひとつです。でも、完全に食い違うようなアドバイスに出くわして「結局のところ何を信じればいいのか分からない」というすっきりしない状態に陥ったことはありませんか?

ぼくは研究者なので、どんな情報であっても、確からしさを「その情報が科学的に作られたものであるかどうか」で判断します。そんなわけで、朝食についての科学的根拠(エビデンス)をまとめました。ぼくなりの結論は「朝食は食べたほうがよい」です。

それでは早速、そのように考える5つの科学的根拠を見ていきましょう。

朝食とは?
朝食の定義は地域や文化によって異なるので、研究レベルでも統一したものが存在しないのが現状です。ここでは「朝起きて最初の、水以外の何かを飲食した場面」と考えてください。すなわち、あなたが朝食だと思うものはたいてい朝食です。

1. 朝食を抜いてもそれほどやせない

朝食を抜けば、その分だけ食べる量が減り、減量につながると考えるかもしれませんが、それは正しくありません。朝食以外の条件をすべて揃えたうえで、朝食が体重に与える影響を4~16週間にわたって調べた複数の実験研究(ランダム化比較試験)の結果をまとめて統計学的に統合したところ(メタアナリシス)、朝食を抜いたおかげで減った体重はわずか540グラムに過ぎませんでした(文献1)。

体重計の画像

思ったほど減量につながらないのは、ひとつには、朝食を抜くと昼食の量や間食の回数が増えてしまうせいだと考えられます(文献2)。いずれにしても、減量しようと考えたとき、朝食を抜くというのはあまり有効な選択肢ではなさそうです。

2. 朝食は1日の摂取カロリーの20%を占める

そもそも、わたしたちはどのくらいのカロリー(エネルギー)を朝食からとっているのでしょうか? これにははっきりとした科学的根拠があります。2万人以上の日本人の食事を詳しく調べたところ、朝食は1日の摂取カロリーの約20%を占めていました(文献3)。ちなみにこの20%という数字は、欧米諸国でも繰り返し観察されていますので、日本人に限ったことではないようです(文献4)。

朝食の割合の図

この図はカロリーのみを示していますが、他の多くの栄養素でも1日全体の摂取量のうちの20%が朝食からとられていることが分かっています。

これらの値は平均値です。よって、平均的な日本人であれば、無視できない量のカロリーと栄養素を朝食からとっているということになります。栄養補給という観点からみて、朝食にはかなりの意味があるということですね。

3. 朝食を抜くと間食の回数が増える

朝食を抜くと何が起こるのでしょうか? 朝食としての栄養補給がなくなるというのはもちろんですが、話はそれだけでは終わりません。その後の食べ方に影響を与えるのです。科学的根拠を見てみましょう。

アメリカで毎年行なわれている全国調査では、1人につき2日分の食事を詳しく調べています。調査に参加した人々の中から、2日のうち1日だけ朝食をとっていた人たちを抜き出してきて、朝食をとっている日ととっていない日の食事内容を比べてみました。その結果、「朝食を抜いた日は間食の回数が増える」ことが明らかになりました(文献2)。

クッキーの画像

間食ではしばしば、お菓子や甘い飲み物など、ビタミンやミネラル類が少ない一方でカロリーは高めな食品が選ばれます。そのため間食は、三食に比べて栄養学的な質が低くなる傾向にあります。その結果として、間食の回数が多い人ほど1日全体の食事の質が低くなりがちです(このことは日本人を含めた多くの集団で明らかになっています)(文献5、6)。このように、1日の最初の食事である朝食を抜くことは、1日全体の食べ方に悪影響を与えかねないのです。

4. 習慣的な朝食の欠食は慢性疾患のリスクを上げる

朝食と慢性疾患の関連はどうなっているのでしょうか? たくさんの人々を対象として朝食をとっているかいないかという習慣を調べたうえで、慢性疾患の発症を追跡した研究(前向きコホート研究)の結果としては、たとえば以下のようなものがあります。

習慣的に朝食を抜くと・・・
・循環器疾患のリスクが21%増す(文献7)
・2型糖尿病のリスクが22%増す(文献8)

一方で、習慣的に朝食を抜くことによって発症のリスクが抑えられるような慢性疾患は、ぼくが知る限りでは存在しません。よって、慢性疾患の発症のリスクを少しでも抑えようと思えば、朝食をとる生活を送ったほうがよさそうなのは明らかです。

5. 朝食は食事以外の健康的な生活習慣とつながっている

朝食は食事以外の生活習慣ともつながっています。具体的にいうと、朝食を欠食するという習慣は、喫煙、運動不足、過度な飲酒、肥満などといった、不健康な生活習慣と関連しているのです(文献9)。この関係はにわとりと卵のようなもので、どちらが原因でどちらが結果かは分からないのですが、朝食をとるという習慣は、健康的な生活習慣をかたちづくるのに不可欠な要因といえそうです。

ジョギングしている人の画像

結論:朝食は食べたほうがよい

朝食に関する質の高い研究をまとめたところ、以下のことが明らかになりました。

1. 朝食を抜いてもそれほどやせない
2. 朝食は1日の摂取カロリーの20%を占める
3. 朝食を抜くと間食の回数が増える
4. 習慣的な朝食の欠食は慢性疾患のリスクを上げる
5. 朝食は食事以外の健康的な生活習慣とつながっている

以上より、ぼくなりの結論は「朝食は食べたほうがよい」です。朝食をとるという行動にかかる時間的・金銭的・心理的コストは、たとえばジムに行って運動をするといった他の行動と比べればとても小さいのではないでしょうか? その意味で、朝食は、現在そして将来の健康に対してとても安上がりな投資といえそうです。

以上、現役の人間栄養学者・村上健太郎が『朝食は将来の健康に対するとても安上がりな投資である:人間栄養学者が考える5つの科学的根拠』についてお届けしました。最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。もっと栄養疫学を知りたい方は、ぜひ下の引用文献を辿っていってその奥深さを体験してください。

引用文献(PubMedへのリンクあり)

  1. Bonnet JP, Cardel MI, Cellini J, et al. Breakfast skipping, body composition, and cardiometabolic risk: a systematic review and meta-analysis of randomized trials. Obesity 2020;28:1098-109.
  2. Kant AK, Graubard BI. Within-person comparison of eating behaviors, time of eating, and dietary intake on days with and without breakfast: NHANES 2005-2010. Am J Clin Nutr 2015;102:661-70.
  3. Murakami K, Livingstone MBE, Fujiwara A, et al. Breakfast in Japan: findings from the 2012 National Health and Nutrition Survey. Nutrients 2018;10:1551.
  4. Gibney MJ, Barr SI, Bellisle F, et al. Towards an evidence-based recommendation for a balanced breakfast-a proposal from the International Breakfast Research Initiative. Nutrients 2018;10:1540.
  5. Murakami K, Shinozaki N, Livingstone MBE, et al. Characterisation of breakfast, lunch, dinner and snacks in the Japanese context: an exploratory cross-sectional analysis. Public Health Nutr 2020 Nov 10:1-13. doi: 10.1017/S1368980020004310. Epub ahead of print.
  6. Murakami K, Shinozaki N, Livingstone MBE, et al. Meal and snack frequency in relation to diet quality in Japanese adults: a cross-sectional study using different definitions of meals and snacks. Br J Nutr 2020;124:1219-28.
  7. Ofori-Asenso R, Owen AJ, Liew D. Skipping breakfast and the risk of cardiovascular disease and death: a systematic review of prospective cohort studies in primary prevention settings. J Cardiovasc Dev Dis 2019;6:30.
  8. Ballon A, Neuenschwander M, Schlesinger S. Breakfast skipping is associated with increased risk of type 2 diabetes among adults: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies. J Nutr 2019;149:106-13.
  9. Keski-Rahkonen A, Kaprio J, Rissanen A, et al. Breakfast skipping and health-compromising behaviors in adolescents and adults. Eur J Clin Nutr 2003;57:842-53.
この記事を書いた人
村上 健太郎

東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 助教。博士(食品栄養科学)。専門は人間栄養学、栄養疫学。特に好きな食べものはくり、ぶどう、かためのパン。趣味は読書、絵画鑑賞、ジョギング(フルマラソンのベストタイムは3時間57分40秒)

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