「食を測る」ことの難しさと奥深さ: 食事を詳しく記録するときに起こることを栄養疫学論文をもとに解説します

記録用紙と食品の画像 栄養疫学の基本

本記事は、栄養疫学分野の一研究者が興味を持ったテーマについて、学術論文をベースに自身の見解も交えて分かりやすく紹介することを目的としています。正確な情報発信を心がけていますが、栄養疫学はとても奥が深く、ひとりの研究者では全容を理解することが難しい側面があります。執筆者の知識不足や誤解から生じる誤りもあるかもしれません。したがって、本記事の内容だけをもとにして結論を急いだり、すぐに食べ方を変えたりすることはお勧めしません。

食べたものを調べるなんて簡単だと思っていませんか?「たしかに食べたものを記録するのは大変だけれども、すべてを記録すれば済むだけでしょう」と。それは完全なる誤解です。実際にこれまでの研究成果は一貫して「食べたものをありのままに記録するのがどれだけ難しいか」ということを示しているのです。

今回は食事記録がどれだけ正確なのかについて、栄養疫学論文をまとめてみました。ぼくの結論は以下のとおりです。食事記録はエネルギー(カロリー)摂取量を20%ほど少なく見積もってしまうことが多いです。これには二つの理由があって、ひとつは普段よりも少なめに食べてしまうせい、もうひとつは食べたものを少なめに記録してしまうせいです。ただし、すべての食品や栄養素が一律に少なく見積もられるわけではなく、たとえば間食はより少なく見積もられがちなようです。また、肥満度が高い人のほうがより少なめに見積もりがちです。このため、食事と肥満との関連を明らかにする研究はとても難しく、たとえば「お菓子を食べるほど太る」というような、自明に思える仮説を支持する結果を得るのは至難の技なのです。

このような結論に至った科学的根拠を見ていきましょう。

摂取量を正確に測定する方法
この記事では「真の摂取量と比較したときに食事記録がどのくらい正確なのか」という点にしぼってお話しします。「真の摂取量」とは、食事記録などとは異なり自己申告に頼らない測定法によって測定された摂取量のことです。そのような測定法、すなわちバイオマーカーが存在するのはエネルギー、たんぱく質、ナトリウム、カリウム、水のみです。バイオマーカーについては別の記事で詳しく説明する予定です。

1. 食事記録はエネルギーを20%少なく見積もる

まずは秤量食事記録から計算されたエネルギー摂取量と真のエネルギー摂取量を比べた研究の系統的レビューを見てみましょう(文献1)。秤量食事記録とは、食べたり飲んだりしたものをすべて重量も含めて記録してもらう方法で、もっとも正確な食事調査法とみなされています。ちなみに秤量食事記録の本場はイギリスで、ぼくの留学先では「7日間秤量食事記録をして自分の食事摂取状況を把握したうえでそれを論文風のレポートとしてまとめる」という課題がありました。

下の図は「秤量食事記録から計算されたエネルギー摂取量は真の摂取量の何%か」を研究ごとに示したものです。研究ごとにかなり幅はありますが、全ての研究で100%より小さい値が得られています。すなわち「秤量食事記録から計算されたエネルギー摂取量は一貫して真の摂取量よりも少ない」ということです。秤量食事記録は平均するとエネルギー摂取量を20%ほど少なく見積もっていました

秤量食事記録から計算されたエネルギー摂取量の正確性の図

上の図の値は、真のエネルギー摂取量を100としたときの、秤量食事記録から計算されたエネルギー摂取量の平均値です。真のエネルギー摂取量は二重標識水法という客観的なエネルギー測定法で測定されています。秤量食事記録の期間は3~21日間(中央値は7日間)です。研究の番号は文献1(系統的レビュー)の引用文献番号を表しています。

2. 少なめに食べて少なめに記録する 

なぜ食事記録ではエネルギー摂取量を少なく見積もられるのでしょうか? このことを明らかにしようとしたおもしろい研究があります。オランダのGorisらは「エネルギー摂取量が少なく見積もられること(過小見積もり)は少なめに食べること(過小摂食)と少なめに記録すること(過小記録)に起因する」という仮説を立てました(文献2)。

過小見積もり = 過小摂食 + 過小記録

そして、食べたエネルギー量と使ったエネルギー量の違いは体重の変化として現れることに着目して「食事記録期間中の体重の変動」をもとに過小摂食の程度を推定しました。一方、ほとんど全ての飲食物には水が含まれていることに着目して「食事記録期間中の水摂取量の正確性」をもとに過小記録の程度を推定しました。(なお過小見積もりの程度は、上で紹介した研究と同様に、食事記録から計算されたエネルギー摂取量を真のエネルギー摂取量と比較することにより推定しています。)

肥満のオランダ人30人(平均BMI:34)における結果は以下のとおりです。この集団におけるエネルギー摂取量の過小見積もりは37%にのぼりました。また過小摂食と過小記録はそれぞれ26%、12%と見積もられました。よって、過小摂食(26%)と過小記録(12%)を足した数字は過小見積もり(37%)とほぼ同じになります。これらは別々に推定された値であるにもかかわらず上の式がほぼ成立するということは、これらの推定値(および計算方法)が妥当であることを示すといえます。

オランダ人肥満者30人の7日間食事記録から計算されたエネルギー摂取量における見積もりの精度の図

上の図の値は真のエネルギー摂取量と比べてどれだけ少ないかを表した平均値(%)です。 真のエネルギー摂取量は二重標識水法という客観的なエネルギー測定法で測定されています。

肥満ではない人々も含めて検討した同様のイギリスの研究によると、過小摂食と過小記録はどちらも5%程度でした(文献3)。ただしこの研究では対象者は12日間の研究期間中ずっと研究用宿泊施設で過ごしました。そのため、たとえば外食などはできませんでした。そのせいで過小見積もりの程度は、日常生活を送る人々を調べたときに比べて小さめに抑えられているだろうと考えられます(文献4)。いずれにしても仮説のとおり「 エネルギー摂取量が少なく見積もられることは、少なめに食べることと少なめに記録することによって起こる」ことが分かりましたね。

「自分は管理栄養士なので正確に記録できる」と言う方もいらっしゃるかもしれません。それは、半分は正解で半分は不正解です。Gorisらが24人の栄養士(平均BMI:22)を対象に行なった研究では、以下のような結果でした(文献5)。すなわち、過小摂食のみが起こっていて「過小見積もり=過小摂食」となったのです(過小見積もりの程度は16%でした)。よって、栄養士なら正確に記録できるというのは本当かもしれません。一方で、食事記録期間中にいつもと同じように食べるのは難しいようです。科学の世界ではよく知られていることですが、やはり「観察結果に影響を与えずに観察することはできない」のです。

オランダ人栄養士24人の7日間食事記録から計算されたエネルギー摂取量における見積もりの精度の図

上の図の値は真のエネルギー摂取量と比べてどれだけ少ないかを表した平均値(%)です。真のエネルギー摂取量は基礎代謝量と三軸加速度計による身体活動量より測定されています。

3. すべての栄養素や食品に一律に影響するわけではない

過小見積もりが起こるのは分かりましたが、すべての栄養素あるいは食品に一律に起こるのでしょうか? 下に示すのは、アメリカ人女性624人(平均BMI:26.5)を対象として、食事記録(7日間×2回)から計算されたエネルギー、たんぱく質、ナトリウム、カリウムの摂取量の見積もり誤差を調べた研究の結果です(文献6)。それぞれの栄養素で見積もり誤差の程度が異なるのは明らかですね。

アメリカ人女性624人の食事記録(7日間×2回)から計算されたエネルギー、たんぱく質、ナトリウム、カリウム摂取量における見積もりの精度の図

上の図の値は、食事記録から計算された摂取量が真の摂取量の何%を占めるかについての平均値です。真の摂取量は二重標識水法(エネルギー)および4回の24時間蓄尿(たんぱく質、ナトリウム、カリウム)で測定されています。

見積もり誤差の大きさは食品の種類によっても大きく異なるようです。12日間にわたって研究用宿泊施設で生活したイギリス人51人を観察した研究では、個々の食品の見積もり誤差の程度は下のようになっていました(文献4)。この図で示した食品の中では、塩・小麦粉・ソース・油など、料理の中に入ってしまうとその量だけでなく存在そのものが分からなくなってしまうようなものが最も少なめに見積もられていました。一方、ビスケット・肉類・朝食シリアルなど、単体で食べるものや料理の中で主要な食材となるようなものは比較的正確に見積もられているようです。

イギリス人51人の3日間食事記録から計算された各種食品摂取量における見積もりの精度の図

上の図の値は、 食事記録から計算された摂取量が真の摂取量の何%を占めるかについての平均値です。真の摂取量は研究者による観察法で測定されています。

同様の別の研究では、間食からのエネルギーのほうが三食からのエネルギーよりもより少なく見積もられがちであることも示されています(文献7)。これらを総合すると「食事記録における過小見積もりは、すべての栄養素や食品、食事場面で一律に起こるわけではなさそう」といえます。

4. 肥満者のほうがより少なく見積もる

食事記録において過小見積もりをしがちな人がいることも分かっています。それは肥満者です。下の図は、エネルギー摂取量を過小に見積もった人と適正に見積もった人における肥満者の割合を示したものです(文献8)。同様の結果は数多くの研究で得られています(文献9)。

7日間食事記録でエネルギー摂取量を過小に見積もった人と適正に見積もった人における肥満者の割合の図

上の図ではBMIが30以上の人を肥満者としています。エネルギー摂取量を過小あるいは適正に見積もったかどうかの判定には、7日間活動日記から推定された身体活動量と性・年齢・体重から推定されたエネルギー必要量を用いています。

ただし、肥満者だからといって必ずエネルギー摂取量を過小に見積もるわけではありません。一方で、非肥満者だからといって必ずエネルギー摂取量を適正に見積もるわけでもありません。たとえば教育歴や収入などの社会経済状態がエネルギー摂取量の見積もりの精度に関連していることも分かっています(文献10)。さらに「自分のことを太っていると思っているかどうか」ということがエネルギー摂取量の見積もりの精度に関連していることを示唆する研究もあります(文献11)。

いずれにしても、エネルギー摂取量の見積もりの精度の関連する要因はたくさんあり、個々人がどのくらいの精度で申告するかを予測するのは難しいようです。食事記録における測定誤差はこのように非常に複雑な現象なのです。ちなみにこのような複雑さは食事記録に限ったことではなく、すべての食事調査法における普遍的な問題です。

5. 食事と肥満の研究はとても難しい

正確な食事データを得ることが難しい、特に肥満者から得ることが難しい、ということは食事と肥満の研究をとても難しいものにしています。たとえばお菓子の摂取量と肥満との関連を調べた研究のメタアナリシスでは「お菓子を食べている人のほうがやせている」という結果が得られています(文献12)。これは「お菓子を食べるほど太る」という、自明に思える仮説に完全に反するもので、にわかには受け入れがたいものです。そこで著者たちは「肥満度の高い人たちはお菓子を肥満の原因となる不健康な食品と考えがちで、そのために肥満度の高い人たちはそうでない人たちよりもお菓子の摂取量を少なめに申告しているのかもしれない」と考察しています。栄養学研究では、このような食事の測定の難しさのために、当たり前に思えるような仮説を支持する結果を得るのがとても難しいのです。

お菓子の画像

まとめ

食事記録に関する栄養疫学研究をまとめてみて、ぼくなりにたどり着いた結論はこうです。食事記録はエネルギー(カロリー)摂取量を20%ほど少なく見積もってしまうことが多いです。これには二つの理由があって、ひとつは普段よりも少なめに食べてしまうせい、もうひとつは食べたものを少なめに記録してしまうせいです。ただし、すべての食品や栄養素が一律に少なく見積もられるわけではなく、たとえば間食はより少なく見積もられがちなようです。また、肥満度が高い人のほうがより少なめに見積もりがちです。このため、食事と肥満との関連を明らかにする研究はとても難しく、たとえば「お菓子を食べるほど太る」というような、自明に思える仮説を支持する結果を得るのは至難の技なのです。日常の食事を測定することの難しさは栄養学における根幹のひとつであり、栄養学研究の奥深さが詰まっていると思います。

以上、現役の人間栄養学者・村上健太郎が『「食を測る」ことの難しさと奥深さ: 食事を詳しく記録するときに起こることを栄養疫学論文をもとに解説します』についてお届けしました。最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。もっと栄養疫学を知りたい方は、ぜひ下の引用文献を辿っていってその奥深さを体験してください。

文献(PubMedへのリンクあり)

  1. Burrows TL, Ho YY, Rollo ME, Collins CE. Validity of dietary assessment methods when compared to the method of doubly labeled water: a systematic review in adults. Front Endocrinol 2019;10:850.
  2. Goris AHC, Westerterp-Plantenga MS, Westerterp KR. Undereating and underrecording of habitual food intake in obese men: selective underreporting of fat intake. Am J Clin Nutr 2000;71:130-4.
  3. Stubbs RJ, O’Reilly LM, Whybrow S, Fuller Z, Johnstone AM, Livingstone MB, Ritz P, Horgan GW. Measuring the difference between actual and reported food intakes in the context of energy balance under laboratory conditions. Br J Nutr 2014;111:2032-43.
  4. Garden L, Clark H, Whybrow S, Stubbs RJ. Is misreporting of dietary intake by weighed food records or 24-hour recalls food specific? Eur J Clin Nutr 2018;72:1026-34.
  5. Goris AHC, Westerterp KR. Underreporting of habitual food intake is explained by undereating in highly motivated lean women. J Nutr 1999;129:878-82.
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  12. Gasser CE, Mensah FK, Russell M, Dunn SE, Wake M. Confectionery consumption and overweight, obesity, and related outcomes in children and adolescents: a systematic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr 2016;103:1344-56.

この記事を書いた人
村上 健太郎

東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 助教。博士(食品栄養科学)。専門は人間栄養学、栄養疫学。特に好きな食べものはくり、ぶどう、かためのパン、柿。趣味は読書、絵画鑑賞、ジョギング(フルマラソンのベストタイムは3時間57分40秒)

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