ナッツを食べれば健康になれる? 人間栄養学者が栄養疫学論文に基づいて考えてみました

ナッツ 食品と健康

本記事は、栄養疫学分野の一研究者が興味を持ったテーマについて、学術論文をベースに自身の見解も交えて分かりやすく紹介することを目的としています。正確な情報発信を心がけていますが、栄養疫学はとても奥が深く、ひとりの研究者では全容を理解することが難しい側面があります。執筆者の知識不足や誤解から生じる誤りもあるかもしれません。したがって、本記事の内容だけをもとにして結論を急いだり、すぐに食べ方を変えたりすることはお勧めしません。

最近はいろいろな種類のナッツがどこのスーパーでも簡単に手に入りますよね。でも、ナッツを食べれば健康になれるのでしょうか? 仮にそうだとして、どのくらいの量を食べればよいのでしょうか? また、どんな種類のナッツでもよいのでしょうか?

今回は、ナッツについての科学的根拠(エビデンス)をまとめてみました。ぼくなりの結論はこうです。「ナッツは健康的な食事を構成する要因のひとつである可能性が高いです。お菓子など栄養価が高くない食品の代わりに1日あたり30グラムくらい(手のひら一杯分)を目安に食べるのがよさそうです。」

このように考えるに至った5つの科学的根拠を順番に説明します。

ナッツの定義
ナッツとは、かたい皮や殻に包まれた食用の果実や種子の総称です。ピーナッツは定義からいうとナッツには含まれませんが、一般の人々はナッツとみなしています。またピーナッツの栄養素組成はナッツに似ています。その一方で、栗は定義からいうとナッツに含まれますが、栄養素組成がほかのナッツと大きく異なります。以上より、この記事では、ナッツにピーナッツは含まれる一方で栗は含まれないと考えてください。主なナッツは以下のとおりです。

ピーナッツ、アーモンド、ウォールナッツ、カシューナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ピーカンナッツ、マカデミアナッツ、ブラジルナッツ、パインナッツ(松の実)

1.「ナッツを食べると太る」という科学的根拠はない

ナッツは、水分が少ない一方で脂質やたんぱく質を多く含むため、重量あたりのエネルギー含有量(エネルギー密度)が大きい食品です。実際ナッツのエネルギー密度は、チョコレートやスナック菓子よりも大きいです(文献1)。

食品番号エネルギー含有量
(kcal/100g)
アーモンド 乾5001609
ピスタチオ いり 味付け5026617
マカダミアナッツ いり 味付け5031751
ピーナッツ
(らっかせい 大粒種 いり)
5035613
コーンスナック15102516
ミルクチョコレート15116551
文献1をもとに作成

このような特徴を考えると「ナッツを食べると太るのではないか」という心配はもっともです。ところが「ナッツを食べると太る」という科学的根拠はありません

まずは日常生活を送る人々を観察した研究をみてみましょう。下の図は、ヨーロッパ10か国で約37万人を対象に行なわれた前向きコホート研究の結果です(文献2)。習慣的なナッツ摂取量とその後5年間に起こった体重の変化とのあいだに正の関連はありませんでした。すなわち、ナッツが多いほど太るということはありませんでした。それどころか、ナッツ摂取量が最も多い人たち(中央値12.4g/日)における体重増加は、ナッツを食べない人たちにおける体重増加よりも統計学的に小さいものでした。

ナッツと体重増加との関連の図

上の解析で交絡因子として扱われているのは以下のとおりです。
年齢、性別、ベースラインの肥満度(BMI)、追跡期間、エネルギー摂取量、教育歴、身体活動、フォローアップ時の喫煙、エネルギー摂取量の申告精度、地中海食スコア(果物とナッツを除いたうえで算出)

例としてこの研究を紹介していますが、ほかの前向きコホート研究でも、それらをまとめたメタアナリシスでもおおむね同様の結果が得られています(文献3)。さらに、ナッツが体重に与える影響を調べたランダム化比較試験(研究期間は2~156週間)のメタアナリシスも同様です(文献4)。まとめると、「ナッツを食べると太る」ということを示した科学的根拠は、ぼくが知る限り存在しません

ナッツを食べても太らないのはなぜ?
ナッツが体重増加を引き起こさないメカニズムとして以下のようなものが考えられていますが、詳細は不明です(文献2、5)。

・ナッツに豊富に含まれる食物繊維や植物性たんぱく質が満腹感を高める
・ナッツに豊富に含まれる不飽和脂肪酸が基礎代謝や食事誘発性熱産生を増やす
・ナッツは完全に咀嚼されないことにより、脂質の吸収を妨げる

2. ナッツは循環器疾患のリスクを下げそう

肥満を引き起こさないだけでなく、ナッツは循環器疾患のリスクを下げる可能性もあります。下の図は、世界16か国で約12万人を対象に行われた前向きコホート研究の結果をまとめたものです(文献6)。習慣的なナッツの摂取量がもっとも多い人たち(平均値35g/日)はナッツをほとんど食べない人たち(平均値0.1g/日)に比べて循環器疾患による死亡のリスクが28%低くなっていました。(ちなみにナッツの種類ごとに別々の解析も行なわれていますが、全く食べない人の人数が多いためにはっきりした結論は得られていません。)

ナッツと循環器疾患との関連の図

上の解析で交絡因子として扱われているのは以下のとおりです。
追跡期間、年齢、性別、居住地(都市部か農村部か)、研究センター、教育歴、喫煙、肥満度(BMI)、ウエスト・ヒップ比、身体活動、循環器疾患の家族歴、糖尿病の家族歴、がんの家族歴、各種摂取量(魚、果物、野菜、赤身肉・加工肉、豆類、総エネルギー)

「ナッツは循環器疾患のリスクを下げそう」という結果はメタアナリシスでも得られています(文献7)。またランダム化比較試験のメタアナリシスでも、短期間(数週間から数か月間)のナッツ摂取による血中コレステロールの低下が観察されています(文献8、9)。ナッツに豊富に含まれる不飽和脂肪酸が血中コレステロールを下げるのに有効であると考えられています。

3. 食事と健康との関連を解釈するときの大前提

以上の結果は何を意味するのでしょうか? わたしたちはナッツを食べてさえいればよいのでしょうか? 「そんなことはない」というのは直感的に分かるでしょう。はい、実際そんなわけはありません。では科学的かつ論理的に解釈するとどのようになるか考えていきましょう。

上で示したナッツと循環器疾患についての観察研究の結果をもう一度見てください(文献6)。

ナッツと循環器疾患との関連の図

上の解析で交絡因子として扱われているのは以下のとおりです。
追跡期間、年齢、性別、居住地(都市部か農村部か)、研究センター、教育歴、喫煙、肥満度(BMI)、ウエスト・ヒップ比、身体活動、循環器疾患の家族歴、糖尿病の家族歴、がんの家族歴、各種摂取量(魚、果物、野菜、赤身肉・加工肉、豆類、総エネルギー)

この解析では「ナッツの摂取量に関連し、かつ、循環器疾患にも関連している各種要因」すなわち交絡因子を調整しています。これらの因子による影響を取り除いたうえで、ナッツと循環器疾患の関連を観察しようという狙いです。言い換えると、他の条件を一定にしたうえで、ナッツが単独で循環器疾患に及ぼす作用を取り出そうとしているということです。

ここで大切なのは「他の条件を一定にしたうえで」です。食事に関する変数について、これが意味するところは「魚、野菜、果物、肉、豆、エネルギーの摂取量がみんな同じなら」です。つまり「対象者全員がこの集団の平均的な食べ方をしていたら」ということです。そのような平均的な食べ方が前提としてあって、そのうえでナッツを食べたり食べなかったりすることにどんな意味があるのか、ということを調べているのです。

介入研究でも同様です。すなわち、ある一定の食べ方があって、そのうえでナッツを食べる群と食べない群を設定し、そして両群を比較するのです。ナッツのみを食べる群と何も食べない群の比較ではないのです。

いずれにしても、ある食品と健康状態との関連を調べる研究においては「注目する食品以外の食品を普通に食べているとする」という前提があることになります。よって、どんな研究成果であっても「その食品だけを食べていればよい」という解釈にはなりえません。ナッツの研究成果も同じです。上で紹介した研究成果は「ナッツさえ食べていれば健康でいられるかも」とは解釈できず「普通の食事をとったうえでナッツを多めに食べれば健康でいられるかも」と解釈できるというわけです。

4. ナッツを食べる人の食事の質は高い

ある食品と健康状態との関連を調べる研究を解釈する際に常に気にかけるべきことがもうひとつあります。それは「ある食品は別の食品とともに食事を構成している」という当たり前の事実です。これを言い換えると「ある食品の摂取量は別の食品の摂取量と関連していて、食べ方全体とも関連している」となります。

ナッツの場合、野菜や果物といった、いわゆる健康的な食品と正の関連を示すことが多いです(文献2、6、10、11)。その結果として、ナッツを多く食べる人ほど食事全体の質が高い傾向にあります(文献10-13)。(さらにいうと、食事全体の質が高い人ほど健康的な生活習慣を送っており、そのような人たちは概して社会的に恵まれた立場にあることが多いです。)

これらの要因はすべて、健康状態をよい方向に向ける働きをすると考えられます。このような要因は上で示した解析のように交絡因子として扱われ、そうすることによってぼくたち研究者はその影響を取り除くのですが、これはあくまで数学的な話です。交絡因子の影響を完全に取り除くのは現実的には不可能と考えるべきです。

よって、上で紹介した研究成果は「普通の食事をとったうえでナッツを多めに食べれば健康でいられるかもしれないけれど、このような関連の少なくとも一部はナッツ以外の要因のせい(たとえば食事全体の質が高いせい)かもしれない」と解釈しておくのが無難です。

5. ナッツの賢い食べ方

下の表は、ヨーロッパ10か国の約37000人を対象として、標準化された食事調査法(24時間思い出し法)を用いて詳しく調べたナッツ摂取量の平均値です(文献14)。日本人のナッツ摂取量も、食事調査法は異なりますが、合わせて示します(文献15)。

ナッツ摂取量(g/日)ナッツ摂取者の割合(%)ナッツ摂取量(g/日。ナッツ摂取者のみ)
デンマーク3.164.526.6
フランス4.7210.233.4
ドイツ3.825.534.7
ギリシャ3.006.531.4
イタリア2.756.027.3
オランダ8.429.838.5
ノルウェー4.386.443.2
スペイン5.2711.940.0
スウェーデン2.042.522.7
イギリス2.049.337.4
日本2.6データなしデータなし
摂取量の値は平均値(文献14、15をもとに作成)

どの国もナッツを食べない人が大多数ですね。ということは、ナッツの恩恵(あるとして)を受けていない人がまだまだたくさんいるということです。

以上を踏まえたうえでナッツの賢い食べ方を考えてみましょう。まず前提として、ナッツを食べるために食生活全体を大幅に変えるようなことはやめたほうがよいでしょう。なぜかというと、日本人のほとんどはナッツをほとんど食べていないですし、ナッツが健康によい影響をもたらすとしたら、(上で説明したように)それはナッツ以外の食品をある程度普通に食べているという条件においてであるからです。

また、ナッツが肥満を引き起こすという科学的根拠はないものの、それは通常の摂取量の範囲においてです。上で紹介した観察研究におけるナッツの摂取量は、最も多く食べるグループでさえそれほど多くないです(文献1では12.4g/日、文献6では35g/日)。これよりも多くの量(たとえば100g/日)のナッツを長期的に食べたときに何が起こるかについてのエビデンスはないと考えるべきです。よって、ナッツの量は多くても1日あたり30グラム程度がよいかと思われます。

さらに、ナッツはエネルギー密度が高いので、ただ食べ増やすのは危険です。そのため、何か他の食品を減らしたうえでその代わりにナッツを食べたほうがよさそうです。ナッツを食べる代わりに減らすべき食品は、栄養価が低くて他の食品の食べ方にあまり影響を与えないものがよいでしょう。日本人の場合、それにぴったりなのはお菓子だと思います。というのは、お菓子の全摂取量のうちの約80%が、品数が少なめで1日の合計の摂取量への寄与が小さいという特徴をもつ間食に登場することが明らかになっているからです(文献16、12788)。お菓子はまさしく、日本人にとって、栄養価が低くて他の食品の食べ方にあまり影響を与えない食品です。

以上より、たとえばお菓子など、栄養価が高くない食品の代わりに1日あたり30グラムくらいを目安に食べるのが、ナッツの賢い食べ方といえそうです。ちなみにナッツの種類は特に気にしなくてもよいでしょう。また味付きはできるだけ避けましょう。

まとめ

ナッツに関する栄養疫学研究をまとめてみて、ぼくなりにたどり着いた結論はこうです。「ナッツは健康的な食事を構成する要因のひとつである可能性が高いです。お菓子など栄養価が高くない食品の代わりに1日あたり30グラムくらい(手のひら一杯分)を目安に食べるのがよさそうです。」食生活全体を大きく変えることなく、ナッツを上手に取り入れるのは、現在そして将来の健康に対する有効な投資となるかもしれませんね。

以上、現役の人間栄養学者・村上健太郎が『ナッツを食べれば健康になれる? 人間栄養学者が栄養疫学論文に基づいて考えてみました』についてお届けしました。最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。もっと栄養疫学を知りたい方は、ぜひ下の引用文献を辿っていってその奥深さを体験してください。

文献(PubMed等へのリンクあり)

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この記事を書いた人
村上 健太郎

東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 助教。博士(食品栄養科学)。専門は人間栄養学、栄養疫学。特に好きな食べものはくり、ぶどう、かためのパン、柿。趣味は読書、絵画鑑賞、ジョギング(フルマラソンのベストタイムは3時間57分40秒)

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