白米は食べないほうがいいの? 人間栄養学者が栄養疫学論文に基づいて考えてみました

白米 食品と健康

本記事は、栄養疫学分野の一研究者が興味を持ったテーマについて、学術論文をベースに自身の見解も交えて分かりやすく紹介することを目的としています。正確な情報発信を心がけていますが、栄養疫学はとても奥が深く、ひとりの研究者では全容を理解することが難しい側面があります。執筆者の知識不足や誤解から生じる誤りもあるかもしれません。したがって、本記事の内容だけをもとにして結論を急いだり、すぐに食べ方を変えたりすることはお勧めしません。

「白米は栄養豊富です」
「白米は糖尿病になるからダメ」

世の中には食や栄養、健康に関する情報があふれかえっています。日本人の主食である白米に関する情報もそのひとつです。でも、食い違うようなアドバイスに出くわして「結局のところ何を信じればいいのか分からない」というすっきりしない状態に陥ったことはありませんか?

ぼくは研究者なので、どんな情報であっても、確からしさを「その情報が科学的に作られたものであるかどうか」で判断します。そんなわけで、白米についての科学的根拠(エビデンス)をまとめてみました。ぼくなりの結論は「白米は、食べすぎると糖尿病のリスクを上げる可能性があるので、半分くらいは玄米などの精製していない穀物に置き換えたい」です。

そのように考える5つの科学的根拠を見ていきましょう。

1. 白米は健康的な食べ方を決定づける食材ではなさそう

日本人の主食である白米は、健康的な食べ方にどのように関与しているのでしょうか? まずは、日本人の食事のパターンを調べたひとつひとつの研究成果をくまなく探してきてまとめた研究(系統的レビューといいます)の結果を紹介します。健康的な食べ方を特徴づける食品として浮かび上がってきたのは、野菜、果物、きのこ、海藻、いも、豆類などで、その中に白米は含まれていませんでした(文献1)。

野菜や果物の画像

白米は主食であるがゆえに、たくさん食べる人とあまり食べない人における摂取量の差が(他の食品と比べて)あまり大きくないため、食事内容の良し悪しにはあまり関係ないのかもしれません。

また、白米の摂取量が多い人は少ない人に比べて、野菜や果物、魚介類、食物繊維やたんぱく質の摂取量が少ない傾向にあるようです(文献2)。これは、白米をたくさん食べるほど他の食品を食べる余裕がなくなると考えれば理解しやすいでしょう。

以上より、白米は、日本人において健康的な食べ方を決定づける食材ではなさそうです。

2. 白米は糖尿病のリスクを上げそう

続いて、白米と2型糖尿病との関連をみてみましょう。食習慣を調べておいて、その後に2型糖尿病を発症するかどうかを追跡した前向きコホート研究を数学的にまとめた解析(メタアナリシス)の最新版が2021年2月に出ました(文献3)。それによると、白米の摂取量が多いほど2型糖尿病のリスクが高まることが明らかになりました。たとえば下の図は、世界21か国に住む約13万人の結果ですが、白米が最も多いグループ(≧450g/日)は最も少ないグループ(<150g/日)に比べて2型糖尿病のリスクが2割高くなっていました(文献4)。

白米と糖尿病との関連の図

ちなみに上の解析で交絡因子として扱われているのは以下のとおりです。
年齢、性別、肥満度(BMI)、ウエスト・ヒップ比、糖尿病の家族歴、喫煙、居住地(都市部か農村部か)、教育歴、裕福度、身体活動、エネルギー摂取量、全粒穀物摂取量、精製穀物摂取量、野菜・果物摂取量、研究センター

白米が2型糖尿病を引き起こすメカニズムははっきりしていません。でも、白米は血糖値を急激に上げがちな食品であり(文献5、6)、また、2型糖尿病に予防的に働くと考えられる食物繊維やマグネシウムも少なめです(文献7、8)。よって、白米が2型糖尿病のリスクを高めるというのは生物学的に十分ありうる話です。

3. 白米を食べなければよいという単純な話ではない

それでは、白米はまったく食べないことにしたほうがよいのでしょうか? 糖尿病のことだけをごく単純に考えるなら、答えは「イエス」かもしれません(ちなみに、白米が2型糖尿病以外の慢性疾患のリスクを上げたり下げたりするという科学的根拠は、ほとんどありません)。

でも、そのせいで別の健康上のリスクが高まるかもしれません。というのは、白米を主食とする日本人は、エネルギーや炭水化物はもちろんのこと、それ以外の栄養素においてもかなりの量を白米から摂取しているからです。たとえば白米は、下の表に示した栄養素における最大の供給源です(文献9、10)。白米を食べないということは、これらの栄養摂取を失うことを意味するのです。

  男性    女性  
エネルギー  34.828.8
炭水化物54.943.4
たんぱく質16.813.1
29.723.1
亜鉛25.019.8
マンガン32.523.7
値は、総摂取量に対するパーセント(文献9、10をもとに作成)

よって、白米を食べないという選択は、「白米を食べないことによる2型糖尿病のリスク低下」についてだけでなく「白米からの栄養摂取がなくなること」についても考えたうえでなされるべきなのです。

さらに、ある食品を食べないという選択は、ほぼ必然的に代わりに他の食品を食べるという選択を伴います。つまり、何かの食品を食べないと決めるならば、同時に、その代わりに何を食べるのかも決めないといけないということです(これは意識的に行なわれるとは限りません)。

わたしたちの食事は、ランダムに選ばれた複数の食品ではなく、一定の組み合わせからなる複数の食品から成り立っています(文献11)。よって、ひとつの食品を食べるか食べないかの選択は、雪崩式に食生活全体に影響を与えかねないのです。その食品が白米のような主食であればなおさらです。

まとめると、ある食品を食べないという選択は、一面的にではなく、できるだけ多くの側面から考える必要がある、ということになります。

4. 玄米は糖尿病に予防的に働きそう

白米の代わりになりそうなものとしてすぐに思い浮かぶのが玄米です。白米から玄米への置き換えであれば食生活を大きく変えずに実現できそうです。玄米から胚芽と糠という栄養豊富な部分を取り除いて食べやすくしたものが白米なので、玄米のほうが多くの栄養素の含有量が多いです。たとえば、100gあたりの白米のめしと玄米のめしの各種栄養素の含有量は以下のとおりです(文献12)。

白米のめし
(食品番号 1088)
玄米のめし
(食品番号 1085)
エネルギー(kcal)156152
たんぱく質(g)2.52.8
脂質(g)0.31.0
炭水化物(g)34.632.0
食物繊維(g)0.31.4
カリウム(mg)2995
マグネシウム(mg)749
鉄(mg)0.10.6
亜鉛(mg)0.60.8
銅(mg)0.100.12
マンガン(mg)0.351.04
ビタミンB-1(mg)0.020.16
ビタミンB-2(mg)0.010.02
ナイアシン(mg)0.22.9
ビタミンB-6(mg)0.020.21
葉酸(μg)310
値は、100gあたりの含有量(文献12をもとに作成)

それでは、玄米と2型糖尿病の関連はどうなのでしょう? 玄米は2型糖尿病に予防的に働くと考えられる栄養素(たとえば食物繊維やマグネシウム)が豊富ですし(文献7、8)、血糖値の上げやすさも白米に比べれば低めです(文献5、6)。実際、アメリカ人の研究ではあるものの、約20万人を14~22年間追跡した結果、玄米を多く食べている人ほど2型糖尿病のリスクが低いということが明らかになっています(文献13)。

玄米と糖尿病との関連の図

ちなみに上の解析で交絡因子として扱われているのは以下のとおりです。
年齢、民族、肥満度(BMI)、喫煙、飲酒、マルチビタミンサプリメントの使用、身体活動、糖尿病の家族歴、コホート(男女)、閉経状態(女性のみ)、ホルモン剤使用(女性のみ)、経口避妊薬の使用(女性のみ)

この研究ではさらに、白米を同じ量の玄米と置き換えたときにどうなるかを調べています。結果は、1日あたり50gの白米を同じ量の玄米と置き換えると2型糖尿病のリスクが16%下がる、というものでした(文献13)。

残念ながら、まだまだ玄米に関する研究成果は十分ではありません。でも、全粒穀物(精製していない穀物)が糖尿病に予防的に働くというのはほぼ確実であるという科学的根拠は揃っています(文献6)。全粒穀物のひとつである玄米が2型糖尿病に予防的に働くと考えてもあながち間違いではなさそうです。

5. 世界各国で全粒穀物が推奨されている

じつは、全粒穀物は2型糖尿病だけでなく循環器疾患やがん、肥満、高血圧といった各種慢性疾患のリスクも下げるということが明らかになっています(文献14-16)。少なくとも、全粒穀物が多いほどリスクが高まるという疾患は知られていません。その結果、世界各国で全粒穀物をもっと食べようというキャンペーンが推し進められています(文献17)。たとえばアメリカでは、穀物摂取の半分を全粒穀物からにしようというメッセージが出されています(文献18)。

玄米の画像

ちなみに全粒穀物に含まれるものとしては玄米のほかに、全粒粉パン、全粒粉パスタ、アマランサス、ポップコーンがあります。また、オーツ、あわ、大麦、きび、ライ麦、キヌアなども精白していない場合は全粒穀物に含まれます。日本には全粒穀物を推奨する食事ガイドラインは存在しませんが、全粒穀物についての科学的根拠の充実度を考えると、日本人もこの世界の流れに乗ってもよさそうです。

まとめ:白米を半分くらい玄米などの全粒穀物に置き換えるのがよさそう

白米に関する栄養疫学研究をまとめてみて、ぼくなりにたどり着いた結論はこうです。「白米は、食べすぎると糖尿病のリスクを上げる可能性があるので、半分くらいは玄米などの精製していない穀物に置き換えていきたい。」食生活全体を大きく変えることなく、白米を半分くらい玄米に置き換えていくのは、現在そして将来の健康に対してとても安上がりな投資かもしれません。ぼくがこのように考える主な理由は以下のとおりです。

1. 白米は健康的な食べ方を規定する食材ではなさそう
2. 白米は糖尿病のリスクを上げそう
3. 白米を食べなければよいという単純な話ではない
4. 玄米は糖尿病に予防的に働きそう
5. 世界各国で全粒穀物が推奨されている

以上、現役の人間栄養学者・村上健太郎が『白米は食べないほうがいいの?:人間栄養学者が栄養疫学論文に基づいて考えてみました』についてお届けしました。最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。もっと栄養疫学を知りたい方は、ぜひ下の引用文献を辿っていってその奥深さを体験してください。

文献(PubMed等へのリンクあり)

  1. Murakami K, Shinozaki N, Fujiwara A, et al. A systematic review of principal component analysis-derived dietary patterns in Japanese adults: are major dietary patterns reproducible within a country? Adv Nutr 2019;10:237-49.
  2. Eshak ES, Iso H, Yamagishi K, et al. Rice consumption is not associated with risk of cardiovascular disease morbidity or mortality in Japanese men and women: a large population-based, prospective cohort study. Am J Clin Nutr 2014;100:199-207.
  3. Ren G, Qi J, Zou Y. Association between intake of white rice and incident type 2 diabetes – An updated meta-analysis. Diabetes Res Clin Pract 2021;172:108651.
  4. Bhavadharini B, Mohan V, Dehghan M, et al. White rice intake and incident diabetes: a study of 132,373 participants in 21 countries. Diabetes Care 2020;43:2643-50.
  5. Atkinson FS, Foster-Powell K, Brand-Miller JC. International tables of glycemic index and glycemic load values: 2008. Diabetes Care 2008;31:2281-3.
  6. Mohan V, Spiegelman D, Sudha V, et al. Effect of brown rice, white rice, and brown rice with legumes on blood glucose and insulin responses in overweight Asian Indians: a randomized controlled trial. Diabetes Technol Ther 2014;16:317-25.
  7. Neuenschwander M, Ballon A, Weber KS, et al. Role of diet in type 2 diabetes incidence: umbrella review of meta-analyses of prospective observational studies. BMJ 2019;366:l2368.
  8. Slavin JL, Martini MC, Jacobs DR Jr, et al. Plausible mechanisms for the protectiveness of whole grains. Am J Clin Nutr 1999;70:459S-63S.
  9. Sasaki S, Takahashi T, Iitoi Y, et al. Food and nutrient intakes assessed with dietary records for the validation study of a self-administered food frequency questionnaire in JPHC Study Cohort I. J Epidemiol 2003;13:S23-50.
  10. Yamada M, Asakura K, Sasaki S, et al. Estimation of intakes of copper, zinc, and manganese in Japanese adults using 16-day semi-weighed diet records. Asia Pac J Clin Nutr 2014;23:465-72.
  11. Murakami K, Livingstone MBE, Sasaki S. Establishment of a meal coding system for the characterization of meal-based dietary patterns in Japan. J Nutr 2017;147:2093-101.
  12. Report of the Subdivision on Resources, The Council for Science and Technology, Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology, Japan. Standard Tables of Food Composition in Japan – 2020 – (Eighth Revised Edition). 2020. Available at https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
  13. Sun Q, Spiegelman D, van Dam RM, et al. White rice, brown rice, and risk of type 2 diabetes in US men and women. Arch Intern Med 2010;170:961-9.
  14. Aune D, Keum N, Giovannucci E, et al. Whole grain consumption and risk of cardiovascular disease, cancer, and all cause and cause specific mortality: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. BMJ 2016;353:i2716.
  15. Schlesinger S, Neuenschwander M, Schwedhelm C, et al. Food groups and risk of overweight, obesity, and weight Gain: a systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. Adv Nutr 2019;10:205-18.
  16. Schwingshackl L, Schwedhelm C, Hoffmann G, et al. Food groups and risk of hypertension: a systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. Adv Nutr 2017;8:793-803.
  17. Miller KB. Review of whole grain and dietary fiber recommendations and intake levels in different countries. Nutr Rev 2020;78(Suppl 1):29-36.
  18. U.S. Department of Agriculture and U.S. Department of Health and Human Services. Dietary Guidelines for Americans, 2020-2025. 9th Edition. 2020. Available at https://dietaryguidelines.gov/

この記事を書いた人
村上 健太郎

東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 助教。博士(食品栄養科学)。専門は人間栄養学、栄養疫学。特に好きな食べものはくり、ぶどう、かためのパン。趣味は読書、絵画鑑賞、ジョギング(フルマラソンのベストタイムは3時間57分40秒)

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