加工肉は食べないほうがよい? 人間栄養学者が栄養疫学論文に基づいて考えてみました

ソーセージの写真 食品と健康

本記事は、栄養疫学分野の一研究者が興味を持ったテーマについて、学術論文をベースに自身の見解も交えて分かりやすく紹介することを目的としています。正確な情報発信を心がけていますが、栄養疫学はとても奥が深く、ひとりの研究者では全容を理解することが難しい側面があります。執筆者の知識不足や誤解から生じる誤りもあるかもしれません。したがって、本記事の内容だけをもとにして結論を急いだり、すぐに食べ方を変えたりすることはお勧めしません。

加工肉とは、塩漬け、熟成、発酵、燻製、化学保存料の添加などの方法で加工された赤身の肉や鶏肉のことです。ハムやベーコン、ソーセージ、サラミなどですね。2015年の国際がん研究機関(IARC)の専門家会議において、加工肉は「人に対して発がん性がある」と判定されています(文献1)。このような事情もあって、加工肉を食べるのを避けている人もいるかもしれません。でも、食べたらすぐにがんになるわけではないはずですよね。また、がんになりたくないのはもちろんですが、他の病気にも同じようになりたくないはずです。加工肉とがん以外の慢性疾患との関連はどのようになっているのでしょうか?

そこで今回は、加工肉について栄養疫学論文をもとに調べてみました。ぼくなりの結論は以下のとおりです。「加工肉は食塩や亜硝酸塩、硝酸塩など、健康によくない影響を与える物質を多く含んでいるので、加工肉をたくさんとるとがんや循環器疾患、2型糖尿病のリスクが高まるようです。でも幸いなことに日本人の加工肉の摂取量は欧米に比べるとかなり少なめです。よって、この食べ方を維持すれば問題ないでしょう。」

このように考えるに至った5つの科学的根拠を順番に説明します。

1. 加工肉はがんのリスクを上げそう

まずは加工肉とがんとの関連を見てみましょう。加工肉の摂取量とがんとの関連を調べた前向きコホート研究のメタアナリシスの結果を下に示します(文献2)。8個の研究を統合したところ、1日あたりの加工肉の摂取量が50g増えるごとに、がんによる死亡のリスクは8%高まる、という結果でした。このことはIARCの「加工肉は人に対して発がん性がある」という判定と矛盾しないですね。

加工肉の摂取量とがんとの関連の図

上の図の値は、1日あたりの加工肉の摂取量が50g増加したときの相対危険(リスク比)と95%信頼区間です。それぞれの研究のかっこ内の数字はメタアナリシスにおける重みです。

2. 加工肉は循環器疾患のリスクを上げそう

次に、加工肉と循環器疾患との関連を見てみましょう。加工肉の摂取量と循環器疾患との関連を調べた前向きコホート研究のメタアナリシスの結果を下に示します(文献2)。10個の研究を統合したところ、1日あたりの加工肉の摂取量が50g増えるごとに、循環器疾患による死亡のリスクが15%高まる、という結果でした。

加工肉の摂取量と循環器疾患との関連の図

上の図の値は、1日あたりの加工肉の摂取量が50g増加したときの相対危険(リスク比)と95%信頼区間です。それぞれの研究のかっこ内の数字はメタアナリシスにおける重みです。

加工肉に豊富に含まれるナトリウムの血圧上昇作用によって循環器疾患のリスクが高まると考えられます(文献3)。また、飽和脂肪酸とコレステロールによる血中LDLコレステロールの上昇の機序も考えられます(文献4)。

3. 加工肉は2型糖尿病のリスクを上げそう

続いて、加工肉と2型糖尿病との関連を見てみましょう。加工肉の摂取量と2型糖尿病との関連を調べた前向きコホート研究のメタアナリシスの結果を下に示します(文献5)。14個の研究を統合したところ、1日あたりの加工肉の摂取量が50g増えるごとに、2型糖尿病を発症するリスクが37%高まる、という結果でした。

加工肉の摂取量と糖尿病との関連の図

上の図の値は、1日あたりの加工肉の摂取量が50g増加したときの相対危険(リスク比)と95%信頼区間です。それぞれの研究のかっこ内の数字はメタアナリシスにおける重みです。

加工肉には飽和脂肪酸やコレステロール、ヘム鉄が豊富に含まれています。これらの物質は動脈硬化のプロセスを促進することによって、高血圧や高コレステロール血症、内皮機能不全、インスリン抵抗性や2型糖尿病につながると考えられています(文献6、7)。また、加工肉に添加されるナトリウムや亜硝酸塩、硝酸塩も2型糖尿病の発症に関与している可能性があります(文献8)。

各種食事性因子と2型糖尿病との関連を調べたメタアナリシスの系統的レビュー(アンブレラレビューと呼びます)によると、加工肉の科学的根拠の質は「高い」に分類されています(文献9)。ちなみに、それ以外に科学的根拠の質が高かった食品は全粒穀物とレッドミート(牛・豚・羊など哺乳動物の肉)のみです。全粒穀物とレッドミートについてはそれぞれ以下の記事をご参照ください。

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4. 加工肉は総死亡のリスクを上げそう

最後に、加工肉と総死亡との関連を見てみましょう。加工肉の摂取量と総死亡との関連を調べた前向きコホート研究のメタアナリシスの結果を下に示します(文献10)。7個の研究を統合したところ、1日あたりの加工肉の摂取量が50g増えるごとに、総死亡のリスクが23%高まる、という結果でした。これまで見てきた関連から考えて当然ですね。

加工肉の摂取量と総死亡との関連の図

上の図の値は、1日あたりの加工肉の摂取量が50g増加したときの相対危険(リスク比)と95%信頼区間です。それぞれの研究のかっこ内の数字はメタアナリシスにおける重みです。

5. 日本人の加工肉の摂取量は欧米よりもかなり少ない

日本人の加工肉の摂取量はどのくらいなのでしょうか? データを見てみましょう。下の図は、日本とアメリカにおける加工肉摂取量の年次推移です(文献11、12)。日本は2003~2015年のデータで、アメリカは1999~2016年のデータです。どちらの国でもこの間の摂取量はほとんど変わりがないようです。日本人の加工肉の摂取量はアメリカ人と比べて一貫して少ないです。

日本とアメリカの加工肉の摂取量の年次推移の図

上の図の値は平均値です(アメリカ人の値はエネルギー2000kcalあたり)。日本のデータは2003~2015年のデータを1年ごとに集計したもので、アメリカのデータは1999~2016年のデータを2年ごとにまとめて集計したものです。

もうひとつ見てみましょう。今度は加工肉の摂取量の国別比較です(文献11-13)。ギリシャを例外として、それ以外のすべての国の加工肉の摂取量は日本の2倍以上です。よって、日本人の加工肉の摂取量は欧米に比べてかなり少ないといえます。

国別の加工肉の摂取量の図

上の図のデータの収集年は、日本が2015年、ノルウェーが1999~2000年、アメリカが2015~2016年、それ以外が1995~1998年。

まとめ

加工肉に関する栄養疫学研究をまとめてみて、ぼくなりにたどり着いた結論はこうです。 「加工肉は食塩や亜硝酸塩、硝酸塩など、健康によくない影響を与える物質を多く含んでいるので、加工肉をたくさんとるとがんや循環器疾患、2型糖尿病のリスクが高まるようです。でも幸いなことに日本人の加工肉の摂取量は欧米に比べるとかなり少なめです。よって、この食べ方を維持すれば問題ないでしょう。」 加工肉の摂取量が少ないのは日本人の食べ方のよい点のひとつといえそうですね。

以上、現役の人間栄養学者・村上健太郎が『加工肉は食べないほうがよい? 人間栄養学者が栄養疫学論文に基づいて考えてみました』についてお届けしました。最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。もっと栄養疫学を知りたい方は、ぜひ下の引用文献を辿っていってその奥深さを体験してください。

文献(PubMedへのリンクあり)

  1. Bouvard V, Loomis D, Guyton KZ, Grosse Y, Ghissassi FE, Benbrahim-Tallaa L, Guha N, Mattock H, Straif K; International Agency for Research on Cancer Monograph Working Group. Carcinogenicity of consumption of red and processed meat. Lancet Oncol 2015;16:1599-600.
  2. Wang X, Lin X, Ouyang YY, Liu J, Zhao G, Pan A, Hu FB. Red and processed meat consumption and mortality: dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. Public Health Nutr 2016;19:893-905.
  3. Bibbins-Domingo K, Chertow GM, Coxson PG, Moran A, Lightwood JM, Pletcher MJ, Goldman L. Projected effect of dietary salt reductions on future cardiovascular disease. N Engl J Med 2010;362:590-9.
  4. Mozaffarian D, Micha R, Wallace S. Effects on coronary heart disease of increasing polyunsaturated fat in place of saturated fat: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. PLoS Med 2010;7:e1000252.
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  6. InterAct Consortium. Association between dietary meat consumption and incident type 2 diabetes: the EPIC-InterAct study. Diabetologia 2013;56:47-59.
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  10. Schwingshackl L, Schwedhelm C, Hoffmann G, Lampousi AM, Knuppel S, Iqbal K, Bechthold A, Schlesinger S, Boeing H. Food groups and risk of all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Am J Clin Nutr 2017;105:1462-73.
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  13. Linseisen J, Kesse E, Slimani N, Bueno-De-Mesquita HB, Ocke’ MC, Skeie G, Kumle M, Dorronsoro Iraeta M, Morote Go’mez P, Janzon L, Stattin P, Welch AA, Spencer EA, Overvad K, Tj?nneland A, Clavel-Chapelon F, Miller AB, Klipstein-Grobusch K, Lagiou P, Kalapothaki V, Masala G, Giurdanella MC, Norat T, Riboli E. Meat consumption in the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition (EPIC) cohorts: results from 24-hour dietary recalls. Public Health Nutr 2002;5:1243-58.

この記事を書いた人
村上 健太郎

東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 助教。博士(食品栄養科学)。専門は人間栄養学、栄養疫学。特に好きな食べものはくり、ぶどう、かためのパン。趣味は読書、絵画鑑賞、ジョギング(フルマラソンのベストタイムは3時間57分40秒)

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