レッドミートは食べないほうがよい? 人間栄養学者が栄養疫学論文に基づいて考えてみました

赤身肉の写真 食品と健康

本記事は、栄養疫学分野の一研究者が興味を持ったテーマについて、学術論文をベースに自身の見解も交えて分かりやすく紹介することを目的としています。正確な情報発信を心がけていますが、栄養疫学はとても奥が深く、ひとりの研究者では全容を理解することが難しい側面があります。執筆者の知識不足や誤解から生じる誤りもあるかもしれません。したがって、本記事の内容だけをもとにして結論を急いだり、すぐに食べ方を変えたりすることはお勧めしません。

肉はたんぱく質や脂質だけでなく、鉄や亜鉛、ビタミンAやビタミンB群といった必須栄養素の重要な供給源です。その意味ではしっかり食べたい食品ですが、一方で飽和脂肪酸やコレステロールも多く含まれるので、とりすぎも心配です。

そこで今回は、レッドミート(red meat)について栄養疫学論文をもとに調べてみました。レッドミートは哺乳動物の肉のことを指します(牛・豚・羊など)。適切な日本語が思い浮かばなかったので、誤解を最小限にするためにただ単に英語をカタカナで表すことにしました。ぼくなりの結論は以下のとおりです。「レッドミートをたくさんとると慢性疾患、特に2型糖尿病のリスクが高まる可能性があります。日本人のレッドミートの摂取量は増加傾向にあり、欧米に匹敵するレベルに達しています。またレッドミート、健康的な食生活に関係していないだけでなく環境に与える負荷も大きいです。よって、レッドミートを他のたんぱく質源(鶏肉など)に置き換える努力は重要でしょう。」

このように考えるに至った4つの科学的根拠を順番に説明します。

1. レッドミートは慢性疾患のリスクを上げそう

レッドミートの摂取量と慢性疾患との関連を調べた前向きコホート研究のメタアナリシスをまとめてみました(文献1-4)。1日あたりのレッドミートの摂取量が100g増えるごとに、2型糖尿病を発症するリスクは17%高まる、という結果でした。循環器疾患とがんによる死亡も同様で、それぞれ15%、12%のリスク増加でした。また、総死亡のリスクも10%高まりました。

レッドミートと慢性疾患との関連の図

上の図の値は、1日あたりのレッドミートの摂取量が100g増加したときの相対危険(リスク比)と95%信頼区間です。 レッドミートは哺乳動物の肉のことを指します(牛・豚・羊など)

研究の数や研究間の結果の一貫性などを考慮すると、2型糖尿病に関するエビデンスの質がもっとも高いといえそうです。実際、各種食事性因子と2型糖尿病との関連を調べたメタアナリシスの系統的レビュー(アンブレラレビューと呼びます)によると、レッドミートについての科学的根拠の質は「高い」に分類されています(文献5)。ちなみに、レッドミートのほかに科学的根拠の質が高かった食品は全粒穀物と加工肉のみです。 全粒穀物と加工肉についてはそれぞれ以下の記事をご参照ください。

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レッドミートには飽和脂肪酸やコレステロール、ヘム鉄が豊富に含まれています。これらの物質は動脈硬化のプロセスを促進することによって、高血圧や高コレステロール血症、内皮機能不全、インスリン抵抗性や2型糖尿病につながると考えられています(文献6、7)。よって、レッドミートのとりすぎが慢性疾患の発症につながるのは生物学的に考えて十分ありうることといえます。いずれにしても、レッドミートのとりすぎは慢性疾患、特に2型糖尿病のリスクを高めることになりそうです。

2. 日本人のレッドミートの摂取量は欧米と変わらない 

「レッドミートのとりすぎが問題になるのはアメリカ人など欧米諸国だけであって、日本人には関係ないだろう」と思っていませんか? データを見てみましょう。下の図は、日本とアメリカにおけるレッドミート摂取量の年次推移です(文献8、9)。日本は2003~2015年のデータで、アメリカは1999~2016年のデータです。この間に日本人のレッドミートの摂取量は増加傾向にある一方、アメリカ人の摂取量は減少傾向にあるのが分かります。そして最近では、日本人のほうがアメリカ人よりもレッドミートの摂取量が多いように見えます(ただし、日本人の値は1日あたりの粗摂取量である一方で、アメリカ人の値はエネルギー2000kcalあたりの量に換算されています。アメリカ人の1日あたりの平均エネルギー摂取量は2000kcalよりも多いので、実際のレッドミート摂取量はもう少し多いと考えられます)。

日本とアメリカのレッドミートの摂取量の年次推移の図

上の図の値は平均値です(アメリカ人の値はエネルギー2000kcalあたり)。日本のデータは2003~2015年のデータを1年ごとに集計したもので、アメリカのデータは1999~2016年のデータを2年ごとにまとめて集計したものです。 レッドミートは哺乳動物の肉のことを指します(牛・豚・羊など)

もうひとつ見てみましょう。今度はレッドミートの摂取量の国別比較です(文献8-10)。日本人のレッドミートの摂取量は欧米諸国と比べて少なくないのは明らかですね。このように、日本人のレッドミートの摂取量は増加傾向にあり、すでに欧米に匹敵するレベルに達しているのです。

国別のレッドミートの摂取量の図

上の図のデータの収集年は、日本が2015年、ノルウェーが1999~2000年、アメリカが2015~2016年、それ以外が1995~1998年。 レッドミートは哺乳動物の肉のことを指します(牛・豚・羊など)

よって「レッドミートのとりすぎが問題になるのはアメリカ人など欧米諸国だけであって、日本人には関係ないだろう」と考えるのは誤りです。日本人もレッドミートに真剣に向き合う必要があるのです。

3. 健康的な食事とレッドミートは関係していない

次に、日本人の食事におけるレッドミートの位置づけを考えてみましょう。日本人の食事のパターンを調べたひとつひとつの研究成果を系統的にまとめた研究によると、各種ビタミン・ミネラルや食物繊維が豊富な「健康的パターン」を特徴づける食品として浮かび上がってきたのは、野菜、果物、きのこ、海藻、いも、豆類などで、その中にレッドミートは含まれていませんでした(文献11)。

ハンバーガーの写真

その一方で、レッドミートが重要な役割を果たしていた食べ方は「西洋パターン」と呼ばれるものでした。この「西洋パターン」の傾向が強いと、マグネシウムやカルシウム、食物繊維といった重要な栄養素の摂取量が少なくなる傾向にあるため、健康的な食べ方とはほど遠いものです(文献12)。以上よりレッドミートは、日本人において健康的な食べ方を決定づける食材ではないといえます。

4. レッドミートの環境負荷は大きい

最後に、レッドミートの環境影響について考えていきましょう。温室効果ガスの排出量の増大は地球温暖化の主要な要因です。食料の生産から消費・廃棄までの全工程で排出される温室効果ガスの量は全体の3割ほどを占めると考えられています。特に、体の大きな哺乳動物を食料にするまでにはたくさんの資源が必要です。そのため、レッドミートの摂取を減らすのが食事由来の温室効果ガス排出量を削減するのに最も有効な方法であることが多くの研究で明らかになっています(文献13)。たとえば下に示すように、食べる肉の量が減るほど(食べる動物性食品の量が減るほど)食事由来の温室効果ガス排出量は小さくなります(文献14)。

食事由来の温室効果ガス排出量の比較の図

上の図の値は、エネルギ-2000kcalあたりの食事由来の温室効果ガス排出量の平均値です。ただし「肉を食べる(100g/日以上)」のグループの値を100としています。

よって、レッドミートを他のたんぱく質源に置き換えることは地球環境の保全につながるといえます。そのような置き換えはまた、慢性疾患の予防にも寄与すると考えられます。たとえばある研究では、85gのレッドミートを同じ量の鶏肉に置き換えると2型糖尿病発症のリスクが15%下がると見積もられました(文献15)。また、乳製品(牛乳なら240ml、チーズなら28g、ヨーグルトなら120ml)やナッツ(28g)に置き換えても同様の結果が期待できるようです。

ちなみにヴィーガンなどの菜食については以下の記事をご参照ください。

ヴィーガンとベジタリアン① 栄養疫学論文から読み解く特徴と健康面のメリット・デメリット
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ヴィーガンとベジタリアン② 地球環境への影響は?
今回は、前半に引き続きベジタリアンダイエットについて考えていきます。前半ではベジタリアンダイエットの特徴とメリット・デメリットをまとめてありますので、詳しくは以下の記事をご覧ください。後半では、ベジタリアンダイエット研究の特徴と問題点を考察したうえで...

まとめ

レッドミートに関する栄養疫学研究をまとめてみて、ぼくなりにたどり着いた結論はこうです。 「レッドミートをたくさんとると慢性疾患、特に2型糖尿病のリスクが高まる可能性があります。日本人のレッドミートの摂取量は増加傾向にあり、欧米に匹敵するレベルに達しています。またレッドミートは、健康的な食生活に関係していないだけでなく環境に与える負荷も大きいです。よって、レッドミートを他のたんぱく質源(鶏肉など)に置き換える努力は重要でしょう。」 食生活全体を大きく変えることなく牛肉や豚肉などのレッドミートを鶏肉に置き換えるのはそれほど難しくないでしょうし、それは、現在そして将来の健康に対する有効な投資になると思われます。

以上、現役の人間栄養学者・村上健太郎が『レッドミートは食べないほうがよい? 人間栄養学者が栄養疫学論文に基づいて考えてみました』についてお届けしました。最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。もっと栄養疫学を知りたい方は、ぜひ下の引用文献を辿っていってその奥深さを体験してください。

文献(PubMedへのリンクあり)

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  4. Schwingshackl L, Schwedhelm C, Hoffmann G, Lampousi AM, Knuppel S, Iqbal K, Bechthold A, Schlesinger S, Boeing H. Food groups and risk of all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Am J Clin Nutr 2017;105:1462-73.
  5. Neuenschwander M, Ballon A, Weber KS, Norat T, Aune D, Schwingshackl L, Schlesinger S. Role of diet in type 2 diabetes incidence: umbrella review of meta-analyses of prospective observational studies. BMJ 2019;366:l2368.
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この記事を書いた人
村上 健太郎

東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 助教。博士(食品栄養科学)。専門は人間栄養学、栄養疫学。特に好きな食べものはくり、ぶどう、かためのパン。趣味は読書、絵画鑑賞、ジョギング(フルマラソンのベストタイムは3時間57分40秒)

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